中学受験いよいよ本番という段階になって、急激に成績が伸びる子供がいます。親や先生たちにとっては願ってもないことですが、いったいどうしてこのようなことが可能なのでしょうか。この記事では中学受験直前期に伸びる子供はどんなタイプなのか、どのようにスランプを脱していくのかについて紹介します。
そもそも受験直前期はスランプに陥りがち
受験直前期には、一定数の子供がスランプに陥る傾向にあります。以下、詳しく見ていきましょう。
長い受験勉強の総決算。受験本番へのプレッシャー
首都圏において、中学受験は小学三年生の二月から始まります。その総仕上げとなる小学六年生の受験直前期、多くの子供たちはこれまで受験勉強に費やしてきた長い時間を振り返り、プレッシャーを覚えるものです。目の前の勉強に集中できなくなってしまう子供、情緒が不安定になってしまう子供など、例年さまざまな反応が見られます。
せっかくここまで頑張ってきたのに、スランプに陥ってしまってはこれまでの努力が水の泡です。子供が落ち着いて受験に臨めるよう、周囲ができる範囲でサポートしてあげる姿勢が必要となります。
成績が上がりにくい状況へのストレス
夏休み明けぐらいから今まで本気で勉強してこなかった子供たちも、集中的に取り組み始めます。中学受験直前期は成績の伸び悩みが、ストレスに直結しやすい時期です。
また、志望校対策に特化した勉強をするため、模試の出題傾向とかみ合わず成績が落ちてしまう事例も多くあります。もっとも、その場合は過去問の点数が合格ラインに到達しているかどうかだけを目安にしたほうがよいです。
生活リズムの変化による疲労の蓄積
受験本番が近づくと、生活リズムの崩れから集中できない子供たちが増えてきます。睡眠時間は最低でも六時間キープするようにしましょう。ただし、六時間はあくまで目安に過ぎません。
わが子が勉強中に居眠りをしていないか、集中力は落ちていないか、気にかけてあげるとよいです。残り少ない時間をフルに活かせるよう、コンディションを整えてあげましょう。
受験直前期に伸びる子供。その理由とは
スランプに陥る子供がいる一方で、受験直前期にグンと成績が伸びる子供もいます。どうしてでしょうか。
受験直前期に伸びる子供は勉強自体を楽しんでいる
受験直前期に成績が伸びる子供は、勉強自体を楽しんでいるケースが多いです。ただ解くだけではなく、問題に向き合う際「自分でもいろんな解き方を試してみたいタイプ」はグングン伸びます。
逆に、「とりあえず目の前の問題をなんとかして解こうとするタイプ」だと、どうしても問題を多角的に理解するところにまでは至りません。
受験直前期にバテないだけの体力がある
受験直前期は皆が全力を振り絞りますから、途中でバテてしまわないだけの体力のある子供がやはり強いです。
受験生ともなるとスポーツ系の部活や習い事は、すでにやめている子供が多いでしょう。それでも、やはり過去に運動経験のある子供はある程度体力が備わっています。
自分の実力不足を正確に把握している
現時点での自分の実力不足を正確に把握できている子供ほど、成績は伸びやすいです。この時期に伸び悩む子供で多いのが「なんだかんだ受かると思う」と楽観視しているケース。
以前、先生たちに繰り返し「油断してはダメ」と指導されながらも、「どこかには受かるよ」と一カ月前までやる気を出せなかった子供がいました。結果、併願校の中で一番偏差値の低い学校までもが不合格。いわゆる「全落ち」に、かなりのショックを受けていました。
自分より成績が下だった友達が、その併願校に合格していたため、なおさら信じがたかったようです。
実力不足を把握していない子供と正確に把握している子供では、ラストスパートへの取り組む姿勢も変わってきます。
目的意識が明確で親子間の温度差がない
どうしてその学校に受かりたいのかがはっきりしている子供には、最後まで頑張り抜く力があります。中学受験は多くの場合、親の主導で志望校を決めるものです。
しかし、志望校への熱意も、親子間での温度差があまりに大きいと、子供のモチベーションだけが上がらない事態に陥りかねません。逆に、親子間で気持ちの温度差が少なく、二人三脚が上手くいっていると、子供もモチベーションを維持しやすいです。
コツコツ型は成績が向上するまでタイムラグがある
毎日コツコツ勉強する習慣がついている子だと、受験直前期の仕上げを経て成績がグンと伸びるケースも珍しくありません。
テスト範囲が狭い場合は、勉強量が点数に反映されるまであまり時間はかからないものです。しかし、テスト範囲が広い場合、どうしても勉強量が点数に反映されるまでにタイムラグがあります。
突然の成績向上はこれまでコツコツ積み上げてきたものが、仕上げの段階を経て、確固たる実力として身についた結果です。
模試対策に注力している。ただし意外な落とし穴も
模試対策に注力している子供も、受験直前期によい成績をたたき出します。先述したとおり、この時期は志望校対策に移る子供が多く、模試対策を優先する子供は少ないからです。
とりわけ、成績上位者は早いうちに志望校対策に移っていて、出題傾向が大きく違うと模試の成績が伸び悩む傾向にあります。ただ、最終的には志望校に受かるのが目標なので、模試対策に注力して成績が伸びている場合は、志望校対策に切りかえるタイミングを見誤らないようにしましょう。
目指せスランプ脱出。受験直前期に伸びる子供の勉強法
受験直前期に伸びる子供はどのように勉強しているのでしょうか。
授業中の集中力が高い
受験直前期に成績が上がる子供は、タイムロスを避けています。そのため、塾や家庭教師の授業中に、うたた寝をしたりぼんやりすることはほとんどありません。
受験本番を控えた焦りから、無理して夜遅くまで勉強したところで、寝不足で集中力は低下します。しっかりと眠って授業に集中できたほうが効率的です。生活を見直しましょう。
疲れからではなく、耳からの情報処理に弱く、つい授業を聞き流してしまう子供もいます。その場合、意識的に先生の言葉を書き留めるクセをつけるとよいです。家庭教師のように一対一の授業なら、声に出して反復するのも高い効果が見込めます。
家庭での勉強を極力減らす工夫をする
受験直前期は家庭学習においても、やるべきことが山積みです。授業中わからなかったところは、その場で付箋を貼るなどしてマークしていきましょう。あとになって、「どこがわからなかったっけ?」と思い出しながらマークし直すと、どうしても時間の無駄が生まれます。
暗記が必要な内容の場合は、授業後すぐに覚え直しておくとよいです。やり直しや覚え直しをその場ですることで、記憶の定着化が図れます。期間を置いて再度チェックしたときに、記憶から抜け落ちている量を減らせるはずです。
とっかかりが早い
成績のよい子供は次になんの勉強をするべきかを意識していて、気持ちの切り替えも早いです。机に向かった瞬間に勉強が始まります。一方、勉強しているようで成績が上がらない子供は、机に向かってからが長いです。ぼんやりしたり、つい遊んでしまったりします。ようやく勉強を始めた頃には、すでに机に向かってから一時間が過ぎていたなんてケースはよくあるものです。
とっかかりが遅い子供には、次にやるべき内容を書き出し、机に貼る習慣づけをおすすめします。机にやるべき内容が具体的に提示されていれば、スムーズに勉強を始められるでしょう。
それでも、始められない子供には、「この問題だけ解いてみて」と一問だけ解かせてみてください。意外とそのまま勉強を続ける子供も多いです。解き始めるまでのハードルが高くてつまずいているタイプの子供には効果的です。
休憩を入れるタイミングを見誤らない
どんなに優秀な子供でも、ずっと勉強し続けていては疲れてしまいます。集中力が切れるタイミングもまちまちで、すぐに休憩したがる子供もいれば、二時間以上集中してから休憩をとる子供もいます。
休憩をとること自体は本人のペースで大丈夫ですが、メリハリがないのは問題です。
直前期に伸びる子供にとって休憩とは、あくまで「勉強に集中するためのもの」です。成績が上がりにくい子供は、短いスパンで休憩を入れたがりますし、そのままダラダラと時間を浪費する傾向にあります。これでは学習はほとんど進みません。休憩を入れるタイミングを見誤らないようにしましょう。
的確に要求や質問ができる
成績が伸びる子供は、先生への要求も的確です。塾や家庭教師の先生を前にしても臆さず「今日の分の質問に付箋貼ってきたから教えて」「この問題が苦手なんだけど、よい類題あったらちょうだい」「この志望校の捨て問ってどのあたり?」など的確に要求や質問をぶつけてきます。
家庭教師であれば一対一ですから、先生の側も目配りして、あれこれサポートしてくれるはずです。しかし一般的な塾では、先生がすべての生徒に対して細かなフォローをすることは難しくなります。先生からの声掛けを待たず、こちらからどんどん働きかけていきましょう。
- 授業に集中できるように睡眠時間はしっかりと取る
- 不明点や重要なポイントはその場で対策をする
- 机に向かった瞬間から勉強開始出来るように工夫する
- 休憩はあくまで勉強に集中し直すための時間という意識を持つ
- 臆さず先生へ質問や要求をぶつける
伸びる子供にするために。保護者にできるサポートって?
保護者にできる子供のサポートにはどんなものがあるでしょうか。
塾や家庭教師としっかり連携する
塾や家庭教師と連携し、子供の状況を把握していると的確にサポートできます。連携がとれていないと、どうしても学習内容が重複したり、方針がぶれたりして無駄が生じやすいです。面談時に長期的・短期的な目標と現状の進捗をこまめに共有するようにしてください。
質問事項や先生にお願いする内容を整理する
あらかじめ家庭で質問事項をとりまとめたり、ほしい問題をとりまとめたりしておくと、子供も先生に声をかけやすいです。家庭と先生とのやり取り用に連絡帳を用意する手もあります。実際、子供のタイプによっては連絡帳はとても有効です。
ポジティブな声かけを意識する
受験生への声かけの仕方は家庭によってさまざまです。受験本番が近づいてくると、現実が見えている分、親のほうが焦ってしまいつい厳しい言葉を子供に投げつけてしまいます。親としても「しまった」と我に返るケースが多いのではないでしょうか。
なるべく子供をやる気にする声かけを意識しましょう。「集中しなさい」ではなく「ここまでやったら休憩しよう」など、子供の心をなごませてあげるとよいです。
勉強できる環境作りをしよう
「子供を動かす」のではなく「子供が動ける」環境作りも大切です。たとえば、とっかかりの遅い子供に対して「どうしたらこの子はスムーズに勉強を始められるのだろうか」と考えたとき、その原因は部屋の環境にあるかもしれません。
机周りが散らかっていて勉強しづらかったり、棚がきつくてテキストがとりづらかったり、問題集をとるために離席しなければならなかったりと、小さなストレス要因が積み重なっている可能性があります。
そんなときはどうしたら勉強しやすくなるかを親子で話し合い、解決に乗り出しましょう。学習する上でのスムーズな動線を確保するのです。子供が気付いていない問題点を大人の目で発見してあげてください。
中学受験直前期に伸びる子供には相応の理由がある
友達の成績が急上昇し、自分の成績が上がらないと「どうして!」と焦ってしまいます。しかし、この時期の焦りは禁物です。
まずは落ち着いて自分が伸び悩んでいる原因を見極めましょう。成績が伸びた友達の勉強法を真似したからといって、効果が出るわけではありません。むやみに新しい教材へと手を出すのも逆効果。この時期は、これまでやってきた学習をどう仕上げていくのかが問われます。
受験勉強に耐え得る体力のある子供、自分の実力不足を正確に把握できている子供、目的意識が明確な子供、コツコツ勉強してきた子供は、ある時期を境にグッと伸びることがあります。自分の問題点を把握して日々の学習ノウハウに落とし込めている子供も、スランプを脱してグッと伸びます。
伸びる理由が子供によって違うように、伸び悩んでいる理由も一人ひとり違います。わが子の抱えている問題点はなにかを見極め、残り少ない時間の中で具体的にどんな工夫をしたら、時間を無駄にしない勉強ができるのかを考えてみるとよいでしょう。
受験本番が近づくとほとんどの親子は焦りを覚えます。「中学受験直前に成績が下がった。原因を知り不安や焦りに打ち勝とう」では焦りの原因について詳しく紹介しています。これからの受験直前期を焦らず迎えるためにも、是非ご参考ください。