中学受験直前になって成績が下がると、どうしても気が動転して落ち着きを失いがちです。しかし、残り少ない時間の中でただ焦るだけではタイムロスにつながります。この記事では中学受験直前に成績が下がった場合、どうすればよいのかについて紹介します。
受験直前に成績が下がる!どんなケースがあるの?
中学受験直前に成績が下がるケースは珍しいものではないのでしょうか。どんなケースがあるのか見ていきましょう。
志望校対策とテスト対策のズレから成績が下がるケース
中学受験直前に成績が下がるケースはよくあります。基本的に、受験生はテストや模試に向けて勉強を進めていきます。しかし、受験本番が近づくにつれて、志望校対策をメインに据える方向に切りかえざるを得ません。
そのため、志望校の出題傾向とテストの出題傾向が噛み合わないと、テストで点をとりづらくなり成績は下降します。こうした理由の場合は、成績が下がったとしてもそれほど心配する必要はありません。受験間際に、志望校合格に向けてピンポイントに対策する姿勢は正しいからです。
勉強の仕方に不足があり成績が下がるケース
志望校の出題傾向と似ているテストなのにもかかわらず、成績が下がってしまうケースもあります。
どの期間の影響で成績が下がったのかを考える
テストと志望校の出題傾向が似ていたのに、成績が下がってしまった場合は要注意です。週例テストのような範囲の狭いテストであれば、成績が下がるのはその週の学習に原因があります。しかし、範囲の広いテストであれば、成績が下がったのは直近一カ月ぐらいの積み重ね方に問題があったからです。
期間がわかったら勉強の仕方の見直しを
間違えた問題の傾向を分析した上で、該当期間の勉強の仕方にどんな不足があったのかを急ぎ考える必要があります。塾や家庭教師の先生に助言を求めてみてください。
たとえば、「授業中の集中力に問題があった」と指摘されたなら、「なぜ集中力が落ちていたのか」を考えます。それにより、就寝時間や起床時間を見直したり予習の仕方を見直したりと、具体的な対応がとれるはずです。
苦手単元ばかりから出題されるケース
テストで苦手単元ばかりから出題されたときは、それほど気にする必要はないのでしょうか。
「運が悪かった」で済ませない姿勢が大切
成績が悪いと、「今回はたまたま苦手単元ばかりから出題されて」と子供はよく言います。実際、苦手単元からの出題が多ければ、当然ながら成績は下がるものです。しかし、「運が悪かった」で済ませるわけにはいきません。
受験直前期ですから、苦手単元に当たったら自分の弱点が判明してラッキーだなと前向きにとらえ、復習に臨みましょう。
類題は厳選して
テスト後はすぐに間違えた問題の類題に挑戦してください。高難度の「捨て問」を除き、ミスはすべて解けるようにしてから類題に着手します。
ただし、類題を網羅的にやろうとする必要はないです。間違えた問題を志望校の出題傾向と照らし合わせて、頻出単元をピックアップしてやり込みましょう。
子供が「苦手単元ばかりから出題された」と嘆いても、その苦手単元があまりに多いようでは受験本番には間に合いません。塾や家庭教師と子供の実力について意見交換しながら、無駄なく対策していくことをおすすめします。
テストと模試の出題形式の違いに対応できていないケース
模試で成績がいきなりガクンと落ちた場合は、問題文のややこしさに対応できていない可能性があります。模試では、長い問題文の中に細かなヒントを散りばめている出題形式が多いです。
そのため、腰を据えて読まないと解けませんし、慣れも必要となります。長い文になるとどうしても集中して最後まで読めず、飛ばし読みで早合点してミスを連発する子供が出てきます。しかも、一問目を間違えると二問目以降にも影響が出るケースが多く、大幅な減点につながるというわけです。
どの科目であれ問題文を読み飛ばさない練習をしていくようにしましょう。ただ、黙読をさせても、子供がちゃんと読めているのか傍目にはよくわかりません。無意識のうちに拾い読みをしている子供が多いので、最初は解く際に小さな声で音読させてみてください。ゆっくり大きな声で音読させている時間的余裕はさすがにないので、早口かつ小声で構いません。
模試では声は出せませんが、練習を繰り返しているうちに黙読でも隅々まで読むクセがついてくるのでぜひ挑戦してみてください。ちなみに、独り言はミスを防ぐ効果があります。勉強は五感を刺激しながら進めていくとスムーズです。
テストの難易度で偏差値が変動したケース
よく保護者は塾や家庭教師に「うちの子の偏差値が落ちたので心配で」などと相談しますが、偏差値の低下は必ずしも成績の低下を意味しません。たとえば、前回のテストも今回のテストも百点をとった子供がいたとします。同じ百点でも、その子供の偏差値は前回と今回で変動しているはずです。テストの難易度や受験者の学力により偏差値は変わりますし、点数の分布の傾向も異なります。
受験間近で不安で落ち着かなくなっているケース
受験本番が近づけば近づくほど、ソワソワして勉強に集中できなくなってしまう子供も多いです。
結果が出ることは誰しも怖い
長きにわたって頑張ってきた受験勉強の結果が出てしまうのは、怖いことです。最後だからとラストスパートがかかる子供もいれば、直前になって勉強が手につかなくなってしまう子供もいます。一時的な混乱で、成績が大幅に下がってしまっては、今までの努力が水の泡です。勉強への向き合い方がいつもと違わないか、目配りしてあげてください。
受験への不安を取り除く声かけを
本人とじっくり話をして不安を取り除いてあげましょう。この時期はどうしても親も塾も焦りから発破をかけがちです。しかし、子供には意図した以上に強い言葉として響いてしまう場合があります。子供を追い詰めてしまう声かけの代表的な例としては、「もう時間がないよ」「このままじゃまずいよ」「不合格になるよ」といった脅し文句が挙げられます。
もちろん、時間が足りない現実を伝えなくてはならない場面はあります。しかし、やみくもに脅すよりも、見通しと具体的な対策を伝えたほうが子供の納得を得られやすいです。
具体的にはどんな声かけをするべき?
口頭だけでの注意は強く責めている印象を与えがち。「もう時間がないよ」は「こうすれば間に合うよ」、「このままじゃまずいよ」は「こうした方が良いよ」、「不合格になるよ」は「合格するためにできることをやっていこう」と、できるだけポジティブに言い換えましょう。これは親のためでもあります。意外と親の側もネガティブな言葉で発破をかけて、知らないうちにストレスをため込んでしまうケースがあるためです。
他にはどんな工夫ができる?
学習計画を作る際には、可視化するようにしましょう。図表で提示すれば、子供も理解しやすく安心感を持ちやすいです。子供と受験に関する情報を共有するときには、聴覚だけではなく視覚に訴えるやり方を意識しましょう。
- 志望校対策と模試対策のズレ
模試の成績に一喜一憂する必要はない - 勉強の仕方が原因
出題範囲の広い模試を意識した勉強法を教師と相談 - 苦手単元が原因
見直し、類題に挑戦して苦手を克服 - 出題形式に慣れない
演習問題に挑戦し、長文の問題文に慣れる - 偏差値が下がった
偏差値は相対的な数値であることを理解し、偏差値よりも回答の中身を分析する - 受験直前で心が不安定
前向きな声かけや学習計画を可視化するなどし、子供が前向きに歩める工夫をする
夏休み明けから成績が上がらない子供には
夏休み明けから成績が停滞し続けている子供も多くいます。なぜでしょうか。
本気で勉強する子供たちが増える
夏休み明けに成績が下がってそのまま停滞しているケースも多いです。「これまでコツコツ頑張ってきたのにどうして」と子供も親もあせってしまいます。
夏期講習あたりから、受験生は勉強に本気で励み始めます。そうすると、これまで手を抜いてきた子供の中で、要領がよい子供、呑み込みが早い子供が急成長を遂げるため、これまでどおりコツコツ努力を重ねてきた子供は急に成績が下がるのです。
最も成績が上がりづらい九月の模試
一番成績が上がりづらいのは九月の模試だと言われます。十月、十一月のほうがまだ模試対策への努力が反映されやすいです。なぜなら、成績上位者ほど早いうちから過去問対策に取り組みます。そうすると、模試対策ではなく過去問対策に多くの時間を割きますから、志望校合格には有利でも模試の成績では伸び悩みを招きがちです。
その分、模試対策に力を入れている子供の順位が伸びる現象が起きます。ただ、最終目標が志望校合格である以上、模試対策より過去問対策のほうが優先順位は高いです。
夏休み明けから停滞し続けている子供の対処法
「勉強をどう効率化するか」を考える作業が必要となります。一日に勉強できる時間は限られていて、これまでも努力してきたとなれば、あとは時間内での学習の密度を上げるよりほかありません。
机に向かってから実際に勉強を始めるまでのタイムロスや、集中力が切れたときの対応など、日頃の勉強の仕方を見直す必要があります。
子供は机に向かっている時間のすべてを勉強時間だと認識していますが、実際にはかけた時間の半分ぐらいしか勉強できていないパターンも多いものです。
塾や家庭教師に、子供の授業中の集中具合や自習時間中の様子を注意して観察してもらいましょう。親も子供の様子に目配りするとよいです。
- 周囲の変化と対策の変化が主な原因
周りの子も頑張るので、今までと変わらない勉強量では相対的に成績は落ちる傾向にあります。また過去問対策に時間を割くと模試の成績は相対的に落ちます。 - 対処法
過去問対策や苦手単元の克服などできることは限られています。その効果を最大限発揮するために勉強の効率化に取り組みましょう。勉強道具の整理整頓、集中できる環境を整えるなどのサポートを行いましょう。
逆に成績が急に上がった場合も要注意
逆に、成績が急に上がった場合はどうでしょうか。持ち前の実力を発揮できた場合もあれば、得意な問題ばかり出題されて、たまたまよい点がとれる場合もあります。
成績が急上昇すると嬉しくて浮かれがちになるでしょうが、冷静な分析も必要です。特に上がり下がりが激しい場合は、その波の理由がどこにあるのか特定するようにしてください。
体調なのか、精神面なのか、出題単元の問題なのか、はっきりと見極めて、受験本番には万全の体勢で臨むとよいでしょう。
受験まで二ヵ月を切ったら優先順位の見直しを
受験まで二ヵ月を切ったら、模試の成績が下がってもなるべく動じないで目の前の勉強に意識を切り替えていきましょう。「過去問で何点とれているか」を基準に学習方針を見直すとよいでしょう。合格ラインに達していない場合は、あと何点必要かを考え、得点源か、捨て問かを見極めて線引きをします。
併願校対策を念入りにしよう
成績が急降下し、「このままでは第一志望校は危うい」となれば、第二志望校以下の受験対策を念入りにする必要があります。どのように進めていけばよいのでしょうか。
「第一志望校は無理」とは伝えない
子供自身、過去問や模試の結果を通して、第一志望校合格の可能性が低い状況はだいたい理解しています。そのため、保護者はできるだけネガティブな物言いを避けましょう。
よくあるのが、子供に釘をさすつもりで「第一志望校は無理そうだから、第二志望校の対策に力を入れておきなさい」と率直に伝えてしまうケースです。子供のモチベーションが低下しかねません。「すべての試験に勝ち抜こうね」など、ポジティブな声かけを意識してください。
併願校の過去問をやり込み、出題傾向を押さえよう
併願校の過去問はどうしても後回しになりがちになり、スケジュール上さかのぼれる過去問数も限られてきます。しかし学校ごとに出題傾向は異なるので、安全校であっても過去問を解いて傾向をつかむ必要があります。
併願校の過去問にもある程度時間的余裕をもって取り組めるよう、子供の学習スケジュールを調整してあげるとよいでしょう。
- 合格ラインに届く勉強を
合格ラインに達することが目標です。得点源と捨て問を見極めて効率的な勉強を。 - 前向きな声かけを
貴重な残りの時間を前向きに取り組めるようにポジティブな声かけを。 - 併願校の対策もぬかりなく
安全校であっても過去問に触れて傾向をつかんでおきましょう。
中学受験直前に成績が下がったら、原因を特定し対応を
中学受験直前に成績が下がったとしても、慌てる必要はありません。まずは原因を特定し、一番無駄のない解決法を模索しましょう。ひとりで背負い込む必要はありません。塾や家庭教師の力を借りてください。
原因は学習の仕方なのか、出題傾向や出題形式の問題なのか、はたまた精神面なのか、さまざまな可能性を考えて、一番効果的な解決法を選びましょう。
成績が下がった場合だけでなく成績が急上昇した場合も注意が必要です。積み重ねの成果であればよいのですが、たまたま出題範囲との相性がよかったケースもあります。自分の実力がどうなのかは、過去問の出来具合を参考に慎重に見極めるとよいです。
受験本番まで二ヵ月を切ったら、どこまでのレベルの問題が得点源となるか、どこからが捨て問かを考えてみてください。
第一志望校合格が難しそうな状況であれば、親がスケジュールを見直し、第二志望校以下の過去問対策に手が回るようにしましょう。できるだけ「第一志望校は無理」といった断定は避けて、ポジティブな声かけで子供の背を押してあげるとよいです。
のんびりして見える子供にはつい強めの喝を入れてしまいますが、あまりネガティブな言葉を投げかけるとやる気を失ってしまいかねないので気をつけるとよいでしょう。
受験本番が近づくとほとんどの親子は過去問の対策に頭を悩ませます。「中学受験の過去問が全然解けない!秋に何割解ければ合格できる?」では具体的にいつ、どの程度の得点を目指すべきか細かく紹介しています。焦らず着実に学力を積み重ねるためにも、是非ご参考ください。