武蔵中学校は御三家のひとつで、練馬区にあります。他の御三家に比べて生徒数が少ない少人数制クラスが特徴です。この記事では武蔵中学を目指す家庭に向けて、出題傾向や国語・算数・理科・社会の勉強法を紹介します。
そもそも武蔵中学校ってどんな学校?
武蔵中学は2022年で創立100年を迎えた伝統校です。少人数制のクラス編成が特徴で、生徒数も全校で五百人程度と多くありません。生徒の自主性を重んじ、大学受験を意識しない教育で知られる武蔵は、学問の本質を追いかける独自教育を貫いています。中学三年生になると、卒論を書かせることでも有名です。
授業中は生徒同士で議論することも多く、生徒が受け身になるような授業はしません。武蔵中学校で行われる豊かな教育に憧れて志望する家庭も多いでしょう。
御三家のなかで東大の進学率では、開成・麻布に差をつけられていますが、学ぶ楽しさを学べる学校であることは間違いありません。ちなみに、2023年度の東大進学率は開成中学が現役118名、OB30名の計148名、麻布中学が現役53名、既卒26名の計79名です。それに対し、武蔵中学は現役16名、既卒5名となっています。
一学年あたりの生徒数は開成が約400人、麻布が約300人に対し、武蔵は約160人なので、合格者数が少ないのは当然ですが、そこを考慮しても差はあります。有名大学合格を目指すより独自性のある教育に重きを置いてきた学校です。
武蔵中学の入試概要
武蔵中学の入試概要について見ていきましょう。
2023年度の入試
武蔵中学の入試は2023年2月1日(水)に実施されました。募集人数は160名です。筆記試験は国語・算数・社会・理科で面接はありません。合格発表は2023年2月3日(金)午前9時から、ホームページで行いました。
2023年度の入試問題はホームページで公開
武蔵中学の入試問題はホームページで公開されています。過去問集でやるのとは違い、フォーマットがよくわかるので、参考までに挑戦しておくとよいでしょう。試験の感覚がつかめます。
武蔵中学における国語・算数・理科・社会の出題傾向
武蔵中学における四科目の出題傾向を紹介します。
国語の出題傾向
武蔵中学の国語は、長文読解一問と漢字・ことばの知識が出題され、100点満点の配点で50分です。頻度としては物語文の出題が多めですが、近年は論説文や随筆文が出題されるケースもあります。記述問題は字数指定がなく、欄に合わせて記述する必要があります。多くても120字程度ですので、その程度でまとめる癖をつけましょう。
字数指定がないと、答えが短すぎたり長すぎたりしてしまいがちですが、その辺りを適切に判断できるかどうかも大切なポイントです。問題文の長さは六千字から八千字程度で、年度によって差があります。とびきり長いわけではありませんが、ある程度のスピードで読み込まなければなりません。内容も高度なので読解力が求められます。
算数の出題傾向
武蔵中学の算数は国語と同様に、100点満点の配点で50分です。出題傾向がはっきりしているのが特徴で、頻出単元としては「和差算」「割合」「平面図形」「速さ」「数の性質」「場合の数」などが挙げられます。
毎年出る単元を絞り込んでくるため、実際どんな問題が出題されるかは過去問を通して確認しておきましょう。問題用紙と解答用紙が一体化しているタイプですので丁寧に書き込みましょう。
理科の出題傾向
試験時間は40分で配点は60点です。大問は3問。解く側の目安として、40点はとりたいものです。大問一、二あたりでは知識を問う基本問題も出題されるため、そこで点数を落とさないようにしましょう。理科は記述問題が一定数出ます。過不足ない答えでいかに点数をとるかが問われます。
理科の記述対策もしっかりしておきましょう。大問3は武蔵名物の通称「お土産問題」です。なにか道具を配布して、それにまつわる問題を解かせます。最終的に道具は持ち帰りとなるため、「お土産問題」と呼ばれるのです。難関校らしく理科と社会の試験の難易度は高めの傾向にあります。
社会の出題傾向
試験時間は40分で配点は60点です。大問ひとつの構成で、分野を横断する出題となります。社会科では図表やグラフを使った問題が頻出のため、読み取る力を養っておきましょう。
出題傾向が比較的わかりやすい武蔵中学ですが、どの分野が多く出題されるかは年度によって異なります。幅広く対策し臨機応変に解き進めなければなりません。知識だけを問うような問題ではなく、解く側の思考力を試す問題です。難易度が高いので、表層をなぞっただけの勉強では太刀打ちできません。
- 四科目すべてで思考力、読解力が求められる
- いかに過去問をこなして慣れておくかが重要になる
武蔵中学に合格したい。どんな勉強が効果的?
武蔵中学に合格するためにはどういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
物語文だけの対策ではNG
かつては「物語文の武蔵」というイメージが強くありましたが、近年は随筆文や論説文も出題されているため、ジャンルを問わず対策しておかなければなりません。読み直している時間はない文章量なので、どんなジャンルであれスラスラ読みこなせるよう読解力を付ける必要があります。
問題集を解くのはもちろんですが、それ以上に低学年のうちから読書習慣を身につけておきましょう。本は、必ずすぐ手にとれる場所に並べておくことをおすすめします。
登場人物の心情を追いかけられるように
物語文の出題比率が高めなので、登場人物の心情を追いかけられるようにしておきましょう。心情ははっきりとした言葉で書かれているとは限りません。風景などに落とし込まれていることもあります。まずはなるべく多くの文章を読み、作中の心情変化を追えるようにしておきましょう。心情に関わる描写を見つけたら線を引く癖をつけましょう。
説明文は全体および段落ごとの要約を
説明文は扱うテーマの難しさから苦手な子供が多いです。まずは、意味段落ごとに分けられるようになってください。その上で、それぞれの意味段落を要約できるようになりましょう。意味段落ごとの要約ができれば、全体の要約もできるようになります。問題文に向き合う際には意味段落を整理する癖をつけましょう。
漢字やことばの知識も
漢字やことばの知識の問題は、あまり難問は出ません。つまり、失点する受験者は少なく、盤石な状態で臨む必要があります。
- 低学年のうちから読解力を付ける必要がある
- 意味段落を整理する癖を付けておく
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
武蔵中学の合否を分けるのは算数
合格者平均点と受験者平均点の差から、武蔵中学の合否を分けるのは算数だとよく言われます。2023年度の場合、合格者平均点は70.5点、受験者平均点は52.9点です。
受験者平均点は例年よりやや高めに出ましたが、それでも合格者平均点との差は大きいです。
つまりこの差を埋められなければ合格を勝ち取るのは難しいことがわかります。後半に行くほど難しくなる構成ではなく、前半のほうに難しい問題が紛れていることもあります。そのため、時間配分には留意しましょう。標準レベルの問題では、武蔵中学の受験者はなかなか失点しないので、難しい問題まで解けるようにしなければなりません。
出やすい単元を押さえておこう
武蔵中学でよく出る単元は「速さ」「数の性質」「割合」「図形」などです。難易度は年度によって多少違いますが、難問が解けないと、合格者平均点はとれないのでやり込みが必要です。「速さ」の場合難問は少ないですが、「割合」は年度によってかなり難しい問題が出ます。「数の性質」は武蔵中学ならではの思考力を要求する問題が多いです。「図形」は比を使って解く問題が頻出なので、対策しておきましょう。基礎を固め、難問まで解けるようにしておきます。
途中式や考え方をきちんと書き込む
武蔵中学は途中式や考え方を書き込むタイプの解答用紙を採用しています。スペースも広めにとっているため、必要な内容はすべて書き込まなければなりません。簡単なようでできない子供は意外と多いです。とりわけ字が乱雑な子供は、読めるように途中式を整理して書くのが苦手な傾向があります。ただ、答えを出せるようにするだけではなく、途中式をきちんと書き出せるようにしましょう。
- 合否を分ける科目なため難問のやり込みが必要になる
- 途中式をきちんと書き出せるようにする
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
武蔵中学ならではの問題に対策を
武蔵中学の理科は実験・観察の問題が多く、通称「お土産問題」といわれる道具を配布して観察させる問題が出題されます。慣れていないと焦ってしまいかねません。ここは、過去問をやり込んでおいてイメージを固めておきましょう。問題集では解いたことのないような問題かもしれませんが、きっちり知識を身に着けていれば解けない問題ではありません。
知識量よりも思考力が求められる
考えることを大切にする武蔵中学らしく、知識量だけを問う問題ではなく、思考力や観察力が求められます。まずは問題文をよく読み込みましょう。その上で、問題文に散りばめられたヒントを生かして解きます。慌てずに考えられるかが問われています。
記述問題の多さに対応できるように
武蔵中学の理科は記述問題の占める割合がとても高いです。そのため、答えがわかっても、書く力がないと得点につながりません。問われているテーマについて過不足ない答えを書けるようにする必要があります。記述は時間がかかりますから、手早く処理できることも大切です。スピードと内容の質が両立できるように仕上げていきましょう。
- 「お土産問題」で焦らない様に過去問を通してイメージを固めておく
- 記述問題に対応出来る様に「書く力」を養っておく
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
リード文の長さにひるまないように
武蔵中学の社会の大問はひとつです。横断的かつ網羅的に出題されます。リード文から長く、二千字前後あり、読み込まなければ問題が解けません。文章が長いだけで苦手意識を持つ子供は少なくありませんが、こうした形式に慣れておく必要があります。
分野にとらわれない勉強を
社会の出題は大問ひとつだけなので、問題もひとつのテーマの下、あらゆる知識を問いかけてきます。社会を学ぶ際、分野別にバラバラに勉強するだけでは、得点につながりません。共通項を手がかりに、点と点を結びながら勉強する必要があります。
たとえば、ある地域について整理する際は、歴史・地理・公民それぞれの分野から知識をまとめていきましょう。ある県について覚えるにしても、ただ覚えるだけではいけません。どこにあり、どんな気候で、どんな山があり、なにが名物で、どんな産業が有名で、時代ごとにどんな変遷があったのかをつないで、立体的な像を膨らませていくのです。
長めの記述問題が出題
武蔵中学の社会では読む力だけでなく書く力も必要です。記述問題の解答は、短ければ五十字前後ですが、長ければ四百字前後ほど書く必要があります。ただし、気をつけなければならないのは、字数指定自体はないという点です。解答欄を見ての判断になるため、あらかじめ慣れておいたほうがよいでしょう。
統計や図版の問題は必ず出る
統計や図版から情報を読み解くタイプの問題は必ず出ます。見方がわかっていないと解けないので、日頃から統計や図版もチェックして見方を理解しておきましょう。
日頃から物事を考える習慣を
武蔵中学は「考える」ことをとても大切にする学校です。そのため、日頃から社会問題にアンテナを張っておきましょう。
- 全分野を横断しながら覚える癖付けをする
- 「統計」「図版」の見方の理解は必須になる
武蔵中学の独自性。考える力を重視する入試
武蔵中学の入試は「考える力」を重視しています。武蔵中学では大学進学のためだけの教育は行いません。いかに自分の頭で考えられる人間を育てるかを重視していて、生徒同士の議論を推奨し、独自性のある教育を採用しています。在学中の偏差値の伸びもよく、武蔵中学の教育は多くの家庭から信頼を集めています。
そのため、武蔵中学の入試もまた、考える力を重視するものです。知識を問う問題より思考力を問う問題が多く、たっぷりと記述問題が出ます。頻出単元は比較的はっきりしていますが、対策しやすいと一概に言えないのは、求められるレベルが高いためです。
まずは過去問をやり込んで、どういった問題が出やすいのかを把握しておきましょう。変わった問題が出ても動じずに済むようイメージトレーニングします。その上で、頻出単元は難問まで解けるよう仕上げましょう。
読む力、書く力を磨くことも大切です。国語の問題を解く際は要約の練習をします。社会問題にも常に関心を向けるようにして、自分の意見をまとめられるようにしておきましょう。