夏休みが中学受験の合否を左右する大切な時期であることは間違いありません。まとまった休みを活かして挽回を図るのであれば、計画的な学習が必要です。この記事では、夏休みをどう活かせば受験合格につながるのかについて紹介します。
受験生は夏休み中、遊ぶ時間はない?
「夏休み」と聞いて浮かれる子供は多いものです。しかし、中学受験を控えている場合、学年と志望校のレベルによっては、とても遊んではいられなくなります。まず、受験生には「夏休み≒勉強」の自覚を持たせましょう。
ただし、適当なタイミングで息を抜く日を用意してください。いくら勉強しても時間が足りない時期ですから、つい焦って全く休みをとらない家庭もあります。もちろん、子供が大の勉強好きで、休みの日がなくても、ストレスが溜まらないのであればなんの問題もありません。
しかし、だいたいの子供は途中で気持ちが挫けます。メリハリをつけないと、ストレスで中学受験自体をやめたがる子供もいます。わが子の様子を観察して匙加減を決めましょう。
なお、受験生以外はやることさえ終わっていれば、ある程度遊ぶ時間を設けても大丈夫です。ただし5年生からは夏期講習がタイトになってきます。子供のスケジュールと相談して予定を立ててください。
夏休みの受験勉強開始! 計画の立て方は?
まずは、生活リズムを見直します。塾に通っている子供は朝から夏期講習。家庭教師にお願いしている子供は、夏期ならではの特別授業や、夏期講習コースを受けているケースが多いはずです。
講習や授業の時間から逆算して、早寝早起きの時間を設定し、一日の時間をどう割り振れば、宿題や復習まで手が回るかを考えます。一日の計画表は円グラフにして部屋に貼りだしてみてください。視覚的に自分がどう動けばよいのかを確認できます。
続いて、「夏休みの目標」と「実現のために必要な学習内容」を書き出します。無謀な計画を立てると、逆にやる気をそがれていくので、取り組む内容は夏休み中に実現可能な範囲に絞り込みましょう。
無駄なく勉強するために、早いうちに苦手箇所の洗い出しをして、計画に落とし込めるようにしてください。過去のテスト結果や塾講師・家庭教師の意見を参考にリストアップしておくと効率的です。夏休み中に問題集の苦手箇所を最低二周して、自力で解けるレベルまで仕上げることをおすすめします。
計画の立て方としては、週ごとにやる内容を設定し、それらを日割りにします。最初の一週間を終えた段階で、計画内容の調整が必要です。実現可能なように計画をブラッシュアップしていってください。
- 生活リズムの見直し
- 一日の計画表を円グラフにする
- 苦手箇所の洗い出し
- 週ごとに計画内容の調整
塾・家庭教師。学習スタイル別に見る夏期講習の受け方
学習スタイル別に、夏期講習のポイントを見ていきましょう。
塾の夏期講習はいらない? 成果を上げるためには
たまに「塾の夏期講習なんていらない」「いきなり一部の単元だけやっても理解できないし、自分にとっては効率が悪い」という意見を耳にします。たしかに夏期講習は一部の単元だけをピックアップしたものです。通常授業だけでも範囲は網羅されていますから、不要といえば不要でしょう。
しかし、夏期講習で扱うのは、中学受験で合格を勝ち取る上で、重要なポイントばかりです。ここは、「順を追って勉強しないと、理解が追い付かない」と諦めるのではなく、「厳選されたポイントを理解の足がかりにしよう」と前向きな姿勢で臨むとよいでしょう。
そもそも順を追ってやり直しをするにしても、夏休みの時点から開始すると「通り一遍」にしかなりません。それならば、要点を押さえて、確実に点をとれる作戦を立てたほうがよいのです。
講習で扱った単元は「その日のうちに理解する」と決めて徹底的に復習します。恐らく知識に不足があるため、芋づる式に遡って復習しなければ、歯が立たない問題がいくつもあるはずです。
全部を遡っている時間はないので、できないところは講習前に先生に質問に行きます。質問した内容は家で解き直しましょう。そうやって繰り返すうちに頻出ポイントを攻略するだけの実力が身につきます。
家庭教師による夏期講習。一人ひとりに合った指導
塾ではなく、家庭教師に夏期講習をお願いしている場合、授業は生徒一人ひとりのニーズに寄り添ったオーダーメイドカリキュラムが基本です。自身の苦手なところを徹底的に洗い出して組まれた内容なので無駄がありません。
ただし、その無駄のないカリキュラムを活かすためには、取り組む側の姿勢が問われます。「間に合わなかった」「できなかった」と言っても、臨機応変に対応してもらえるのが家庭教師の強みです。一方で、その臨機応変さに甘えず、決められたカリキュラムを着実にこなす姿勢も必要とされます。
一番簡単なのは家庭教師にお願いして、宿題の中に必要な勉強をすべて落とし込んでもらうことです。授業や苦手単元の復習を全て宿題としてパッケージングしてもらいましょう。宿題は毎回、「多かったか、少なかったか」を家庭教師にフィードバックしてください。子供にとって適正な量を見極めて出してもらうとよいでしょう。
塾と家庭教師を併用して夏期講習に臨むなら
中学受験を目指す家庭の中には、塾と併用して、補習の位置づけで家庭教師をお願いしているケースも多いです。講習でわからなかったところは、家庭教師に徹底的に解説してもらいましょう。自力で解けるようになったかを確認するため、類題にも挑みたいところです。授業中、問題を解いている時間に類題のピックアップ作業を家庭教師にお願いするとよいでしょう。
ちなみに、塾は夏期講習以外にもオプション講座をよく営業してきますが、基本的には受けなくて大丈夫です。手を広げ過ぎると収拾がつかなくなりかねません。オプション講座より夏期講習に焦点を絞り、家庭教師に補習をお願いしたほうがよほど成果を得られます。苦手箇所の分析も家庭教師なら一対一のスタイルの強みを活かして、すぐにやってくれるはずです。
塾と家庭教師の併用は、勉強の効率が上がるだけではありません。「自力で怒涛の夏期講習を乗り越えなければならないプレッシャー」から、親子ともども解放されるという利点もあります。
これだけはやっておきたい。夏休み中の学習ポイント
夏休み中に押さえておきたい学習ポイントを紹介します。
計算と漢字や語彙は短時間集中で継続的に
夏休みが終わった時期に「計算が苦手。漢字や語彙が全く頭に入っていない。」という状況だと、受験は厳しくなります。そのため、毎日20分ぐらいとって、計算・漢字・語彙の問題に挑戦しましょう。間違えた問題は翌日解けるか確認してください。
特に語彙は受験直前になって「全然覚えていない。どうすればいい?」と泣きつく子供がたくさんいます。当然ながら間に合わないので、けっきょく中途半端なまま受験に挑むはめに。逆に言えば、語彙が豊富であることは点差を作るためのカギとなります。一点差が合否を左右する中学受験においては重要な切り札です。
夏休み中に第一志望の過去問スタート
多くの子供が夏休み中から過去問を始めます。本格的にやり込むのは秋・冬でよいですが、とりあえず第一志望にどんな問題が出て、現状自分はどのぐらい解けるのかは把握しておくようにしましょう。
志望校の難易度を下げていない限り、この時期は合格点に届かない人のほうが圧倒的多数です。合格ラインに何点足りないかがはっきりすれば、夏休み中にやるべきことも明確になります。
「第一志望の過去問はあとにとっておくんだ」「古い問題からやって新しい問題はとっておくんだ」という声も聞きますが、勉強の効率で考えるなら断然「第一志望の新しいものから」着手したほうがよいです。第一志望合格のための準備という観点から取り組むようにしましょう。
過去問は一回だけ解いて終わりではありません。実力を固めてからもう一度解き直して、自分の実力をはかるものです。「合格点とれなかった」と嘆いて、そこで見直しをしない子供が多いので親が声をかけて復習するよう促しましょう。
夏休みの学習で、注意すべきことってなに?
夏休みの学習における注意点は以下のとおりです。
新しい問題集には手を出さない
受験が近づくにつれて親のほうが焦ってしまい、あれこれ新しい問題集に手を出すケースがあります。これはやめておいたほうがよいでしょう。基本的に問題集は一冊を完璧に仕上げるつもりでやり込むのがよいのです。
新しい問題集を購入するとしたら、復習に使う類題が不足しているときぐらいで大丈夫です。あくまで今までやってきた問題集を受験対策の軸に据えましょう。
「やり終わったらもう一周。それもやり終わったならさらにもう一周」というのが受験の基本です。できない問題をひとつずつ確実につぶしてください。
塾の夏期講習の鉄則。宿題はできる範囲で
家庭教師であれば、宿題は自分に合った分量に調整してもらえます。しかし、集団授業の塾となるとそういうわけにはいきません。苦手単元の克服に手をつけるどころか、「宿題さえ終わらない」なんて事態に容易に陥ります。
夏期講習の宿題は、通常授業と比べても、解答を丸写ししてきてしまう子供の率が高いです。塾によっては、眠れないぐらいの宿題量を出すところもあるので、無理もありません。夏休みは「苦手な箇所の克服」と「宿題」と「授業の復習」が三本柱ですが、宿題だけに振り回されてしまうと、なにも身につかないまま時間だけを浪費してしまいます。
わが子が宿題をやっていないと聞けば、親はつい「ちゃんとやりなさい!」と叱り飛ばしてしまいます。しかし、「ちゃんと」できないぐらいの量がわが子に課されている場合、すべきことは叱りつけではなく塾への相談です。
まず「今の実力ではとても宿題がこなせないから、やりきらなくてもよいか」を確認しましょう。塾によってはかなりの割合でこういう子供は出てくるものです。そのため、だいたいの塾で「できる範囲で大丈夫」と言ってくれます。成績アップのためにはそこで話を終わりにせず、塾に頼んで宿題の中身で優先順位が高いものを厳選してもらってください。
基本的には、「難易度が高すぎて自力では無理」と感じる宿題は、先生に解説してもらえるまで手をつけなくても大丈夫です。悩んでいる時間が無駄になる可能性があります。解説してもらうところから始めましょう。
宿題量について相談したのに、「志望校に行くためにはこのぐらい量をこなしてもらわないと困る」と譲らない塾の場合、転塾や家庭教師を検討したほうがよいかもしれません。具体的な解決策はなにひとつ提示しないのに、上から「やれ」とだけ言ってくる塾は指導力に問題があります。
- 親が焦らないようにする
- あれこれ新しい問題集に手を出さない
- 夏期講習の宿題・課題はできる範囲に設定する
- 難易度が高い問題に悩みすぎない
夏休み中に間に合わなかった苦手分野は秋までに
怒涛の夏休み明けの模試で結果がふるわないと、そこで気持ちが挫けてしまう子供が出てきます。親も「あんなに頑張ったのにどうして」と脱力してしまいがちです。
ただ、この時期の模試で成績が落ちるのは珍しい話ではありません。皆が頑張る時期なので順位も変動しやすいのです。あまり考え込み過ぎないようにしましょう。
夏休みに終わらなかった苦手分野の克服は11月までに仕上げるのが理想です。それまでにある程度、解ける実力をつけて、冬はもう一段階高いレベルへと仕上げていきます。
夏休みに中学受験合格目指して挽回を図るなら、計画性をもって
夏休みを最大限活用するためには、一日の時間の使い方や、夏休み全体の学習計画を最初に立てておきましょう。詰め込み過ぎると計画倒れします。一週間試した手ごたえをもとにして、随時計画をブラッシュアップしていってください。苦手分野の洗い出しは、塾講師や家庭教師からもアドバイスをもらうと、とりこぼしがありません。
可能ならば、時間を見つけて第一志望の過去問にも挑戦したいところです。過去問は昨年度のものをやってみてください。この時期、よい結果が出ないのは皆同じなので、そこからどう実力をつけるか作戦を立てましょう。
夏期講習中の塾の宿題は、程度の差こそあれどこも大量なので、もしどうしてもやりきれなければ、塾と相談して調整したほうがよいです。場合によっては家庭教師を併用して対応しましょう。家庭教師は、生徒一人ひとりに合ったカリキュラムを考えるエキスパートです。夏が終わっても受験はまだまだ続きます。睡眠時間だけは確保し受験まで体調を崩さないことが大切です。