桜蔭中学校は女子御三家のトップに君臨する学校です。女子校では東大合格者数ナンバーワンで、礼と学びの心を重んじています。この記事では桜蔭中学校を目指す家庭に向けて、国語・算数・理科・社会の勉強法について紹介します。
そもそも桜蔭中学校ってどんな学校?
女子校の御三家のひとつである桜蔭は東大の進学率も高く、女子校では最難関の学校です。令和5年の東大進学者数は72名。それ以外にも難関大学に多くの生徒が進んでいます。
関東大震災の直後、女子教育機関の不足を整備する中で、大正13年に桜蔭女学校が認可されました。現在のお茶の水女子大学である東京女子高等師範学校の同窓会、社団法人桜蔭会によって創立された学校です。
桜蔭中学校は「礼と学び」の心の育成を掲げ、品性と学識を備えた人間形成を教育の理念とする学校です。そのため、桜蔭には礼法の授業があります。礼法といってもただ礼儀を学ぶのではなく、異なる価値観を持つ人々と協働する心を学ぶのです。桜蔭は自立した女性の育成、多くの人々と協力して社会を支えていける人間の育成を目指しています。
桜蔭中学校の入試概要
桜蔭中学校の入試について見ていきましょう。
2023年度の入試
令和5年2月1日に実施された入試では、出願者数629人、受験者数607人、合格者数290人、補欠者数30人でした。募集人数は235人です。国語・算数・社会・理科の筆記試験と面接があります。合格するためには六割程度得点できるようにする必要があると言われています。
スケジュールに遅れないように
令和5年に実施された入試では2月1日入試、2月2日合格発表、2月3日入学金の決済、2月6日合格者保護者会とタイトです。合格者保護者会は欠席の場合、棄権とみなされてしまいます。
2月1日 | 入試 |
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2月2日 | 合格発表 |
2月3日 | 入学金決済 |
2月6日 | 合格者保護者会 |
桜蔭中学における国語・算数・理科・社会の出題傾向
桜蔭中学における四科目の出題傾向を紹介します。
国語は記述問題が多いので、説明する力を
国語は50分で100点の配点です。大問がふたつ出題されます。ひとつは論説文でもうひとつは小説の組み合わせが一般的ですが、論説文のかわりに随筆文の年もありました。
記述問題に重きが置かれていて、全体の八割が説明させるタイプの記述問題であるため、読む力と書く力の両方が求められます。2023年度では13題のうち7題の字数指定がありませんでした。
国語の問題文は七千字から八千字が多いですが、九千字程度になるケースもあります。難問が多いですが、2023年度は比較的標準寄りの難易度に設定されていました。
算数は途中式や考え方をコンパクトにまとめて
算数は50分で100点の配点です。大問は四~五題ほどで構成されています。大問の一番は計算や小問によって構成され、それ以外は応用問題です。桜蔭の算数は難易度が高く、中学受験対策で一般的な勉強をしていただけでは解けません。特定の単元を掘り下げていれば解けるわけではなく、単元の枠を超えた理解を求められますし、思考力が必要です。
「立体図形」「規則性」「速さ」「数の性質」などが頻出単元です。また、不定方程式や特殊算を使った問題がよく出ます。
桜蔭の解答欄は答えだけではなく、途中式や考え方を書き込んでいくタイプです。そのため、ポイントを押さえる力が欠かせません。桜蔭の解答欄のスペースはそんなに余裕がなく、必要な情報をピックアップして落とし込まなければならないため、注意が必要です。
難問が少なめの構成である理科
理科は30分で60点満点です。大問は四~五問程度で問題数が多く、時間内にスピーディーに解かなければなりません。
桜蔭の入試は基本、高難易度の問題が多いですが、理科に関しては標準レベル以上ではあるものの、極端な難問は少ないです。生物分野・化学分野・物理分野・地学分野、満遍なく出題されていて、時事問題と絡めた出題もあります。
計算が必要な問題が多めで、ただ計算するだけではなく、グラフを読み取る力も求められます。算数的な発想が必要です。記述問題は長く説明させるタイプの問題は出ません。
テーマ性に基づいて時代を超えた出題が多い社会
社会は理科と同じく30分で60点満点です。大問は三~四題程度で、地理・歴史・公民・時事問題から出題されますが、全体で見ると公民が少なめな傾向があります。
歴史は時代ごとの出題ではなく、あるテーマに基づいた出題が多いです。社会で学んだ内容の点と点を結び付ける問題であるため、一問一答ができるだけでは解くことができません。時事問題は独立した大問で出題されるわけではありませんが、時事をおさえていないと解けない問題が出ます。
- どの科目も基本的に「読解力」が必要
- 常にスピードを意識して勉強することが必要
桜蔭中学に合格したい。どんな勉強が効果的?
桜蔭中学に合格するためにはどういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
スピーディーに読み内容を把握する
桜蔭の国語は文章の字数が多いため、長い文章を短時間で読み込まなければなりません。特に説明文は難しい文章が多いです。読み返している時間がないので、一回の速読で理解できるだけの読解力を身に付けましょう。低学年のうちから、できるだけさまざまな本を読ませておくことをおすすめします。
読書習慣は環境作りが大切です。子供が手を伸ばしやすい場所への本棚の設置、図書館や書店に通う習慣の定着化、テレビやタブレットを視聴する時間のルール作りなど、家庭で取り組めることはたくさんあります。
読書習慣は暇な時間に本を読むところから始まります。親が無理やり本を勧めるのではなく、身近な娯楽として本を用意してあげてください。
要約と感想を書かせる
問題集を解くだけではなく要約を書かせるようにしましょう。実際に書いてみて初めて、要約と感想の違いがわかりますし、文意を把握し過不足なくまとめる力を身につけられます。
桜蔭の国語において、合否を分けるのは記述問題です。記述問題の割合は大きく、全体の半分以上を占めます。この記述問題が難問で、設問に対しほぼ書き抜きでよいような単純な問題は出題されません。広範な内容から過不足なくまとめなければならない問題が多く出ます。つまり、要約力が問われるのです。文章のポイントをピックアップして構成できるようにしておきましょう。
なお、文章のチェックは塾や家庭教師の先生にお願いしてください。自分の文章の欠点はなかなか見えてこないものです。
漢字を確実に書けるように
漢字を正確に書けるようにしておきましょう。漢字の問題で失点する子供はあまりいません。語彙や漢字は常日頃から勉強しておきましょう。
- 速読と要約力を鍛える
- 要約と感想を書く練習を重ねる
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
頻出単元を掘り下げて勉強しよう
桜蔭の頻出単元は「立体図形」「規則性」「速さ」「数の性質」などです。問題集のように単元ごとに問題が出るわけではなく、複数の単元で学んだ内容を組み合わせないと解けない問題が出てきます。まずは単元ごとに掘り下げて理解しておくことが欠かせません。その上で、柔軟に解く力が求められます。
難易度の低い問題を確実に解けるように
桜蔭の問題は出だしから難しいケースが多く、気持ちが折れそうになるかもしれません。しかし、意外と後半に行くと、小問の中に難易度が低い問題がちらほら混ざっています。難易度の低い問題を落としていては受からないので、まず頻出単元の中でも標準・応用レベルを固めて、確実に解けるところまで仕上げていきましょう。
スピードをもってケアレスミスを防ぐ
桜蔭の問題は難問が多い上、解き方を組み合わせる必要があるため、時間がかかりやすいです。見直しに使える時間はわずかなので、一回で正解をたたき出さなければなりません。キリの悪い数が答えになるケースも多いため、「これで本当によいのか」とすっきりしない気持ちのまま次の問題に移らなければならないのが辛いところです。つい不安になって解き直していると、あっという間にタイムオーバーになります。そうならないよう、日頃から時間制限を設けて、緊張感をもって問題に臨むことをおすすめします。
- キリの悪い数が答えになっても間違えていると思わないようにする
- 時間制限を設けて緊張感をもって取り組む
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
基本問題を落とさないための準備を
桜蔭の理科は用語を問うような、基本の問題を散りばめて出題してきます。もちろん、最難関レベルの桜蔭なので、そこで点数を落とす子供はほとんどいません。つまり、基本問題を間違えると一気に合格が遠のきます。とりこぼしがないように仕上げておきましょう。
算数と密接な単元をやり込もう
桜蔭の理科で難しいのは、算数的な問題です。問題文を理解し、図表から必要な情報を読み取り、計算しなくてはなりません。おまけに、前の問題を受けて次の問題が成立する構成になっているため、ひとつでもつまずくと後の問題も間違ってしまいます。
まずは過去問を解いてそうした問題の構成を理解しておきましょう。あらかじめイメージができているだけでも、だいぶ強みになります。
桜蔭の理科は問題数が多く焦ってしまいますが、一問一問慎重に解く姿勢を日頃から意識しておくことが大切です。計算が必要な単元は掘り下げておきましょう。
化学では「水溶液の中和反応」や「濃度」は頻出単元なので、やり込んでおくとよいです。物理では「力学計算」がほぼ毎年出題されています。地学や生物における計算問題は思考力を要求されるケースが多いです。過去問を参考にしてください。
- 前の問題を受けて次の問題が成立する構成に慣れておく
- 次の問題に影響するので一問一問慎重に解く習慣を付ける
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
語句の問題で失点しないように
桜蔭の社会は語句で答える問題の占める割合が大きいです。つまり解きやすい問題なので、他の受験生も確実に点をとってきます。いかにこうした基本問題で失点しないかが問われます。語句を覚えるときは漢字の書き間違いにも気をつけてください。
時事問題も押さえておこう
時事問題の括りでの大問はなくても、他の分野に組み込まれて出題されるため、日頃からニュースをチェックしておきましょう。時事のテキスト頼みにするのではなく、日常的に新聞、テレビ、ラジオなどでニュースに接しておくことをおすすめします。ただし、テレビやラジオの場合、専門外のコメンテーターがメインで発言する番組は避けたほうがよいでしょう。そのテーマを専門とする研究者を招いて発信している番組を選んでください。
資料を読めるように
グラフや年表から必要な情報を読み取る問題が多いのも、桜蔭の特徴です。テキストや問題集に載っている資料を読み込み、慣れておきましょう。とにかく制限時間に対して問題数が多いので、身構えずに取りかかれるようにならなければなりません。
スピードを意識した勉強を
桜蔭の場合、腰を据えて考えなければ解けないタイプのややこしい選択問題も少なからず出題されます。これらの難問が解けるかどうかが合否の分かれ目です。時間がなくても、落ち着いて正解を選び取りましょう。家庭でも、問題を解く際には必ずタイマーをかけて時間感覚を養います。桜蔭の社会では、30分で50問の小問を解ききるぐらいの速度が必要です。
優先順位を意識した勉強を
桜蔭の社会では、公民の出題が明らかに少ないので、ほかの分野から優先的に勉強を進めていくとよいでしょう。
- 日常的に時事情報を取り入れる
- グラフや年表から必要な情報を読み取る力を養う
桜蔭に合格するにはスピードと正確さを磨き上げなければならない
桜蔭は問題量が多いため、合格点をとるためにはスピードを要します。文章を読み解き、数をこなし、難問であっても正解を導き出すとなると、問題への理解度の高さはもちろん、集中力が求められます。テスト慣れしていないと浮き足立ってしまい、いつもの力を発揮できません。タイマーをかけて過去問をやり込み、あらかじめイメージトレーニングをしておきましょう。
国語の読解文はもちろん、他の科目でも文章がきちんと読めていないと解けない問題がたくさんあります。すべての基本に読解力があるので、低学年のうちから本と親しむ機会を作ってあげてください。国語は速読と要約力を鍛えましょう。算数は頻出単元である「立体図形」「規則性」「速さ」「数の性質」などを固めてください。理科は計算問題が合否の分かれ目なので、過去問を参考にして解けるようにしておくとよいでしょう。社会は語句を正確に覚え、時事問題も押さえます。
最難関校の名前に相応しいテストです。一点でも多くとれるようにし、合格を勝ち取りましょう。