開成中学校といえば、御三家のひとつであり東大進学率の高さで有名な最難関校です。この記事では開成中学を目指す家庭に向けて、国語・算数・理科・社会の勉強法を紹介します。
そもそも開成中学校ってどんな学校?
明治4年、幕末の知識人として知られる佐野鼎によって創立され、「共立学校」と名付けられました。欧米の教育事情を視察した折、日本にも欧米に匹敵する教育が必要だと考えて創られた学校です。東大の進学率はトップで、2023年は現役118名、OB30名が合格しています。他にも、旧帝大をはじめとする難関大学の進学率で、圧倒的な結果を出している名門男子校です。
開成中学校の入試概要
開成中学校の入試について見ていきましょう。
2023年度の入試
開成中学校の入試は2023年2月1日に実施されました。国語・算数・理科・社会の四科目で、募集人数は300名です。合否の発表は2月3日、ホームページ上で行われます。
2021年度・2022年度は追試験も
コロナ禍を受けて2021年度・2022年度は追試験を実施しています。ただし、2023年度は状況の変化を受けて実施していません。体調管理には一層気をつける必要があります。
模範解答を販売
開成は入試の模範解答を公開しています。学園説明会のときに模範解答付きの入試問題の実物が販売されるので購入しておくことをおすすめします。
開成中学における国語・算数・理科・社会の出題傾向
開成中学における四科目の出題傾向を紹介します。
国語の出題傾向
国語は試験時間50分、85点満点です。大問は1問もしくは2問で構成されていて、1問のときはかなり長い文章が出題されます。問題の難易度は高く、物語文では登場人物の心情を問う問題がよく出ます。問題文が長い上、選択問題が少なく記述問題が多いため、ハイペースで解く力が必要です。
問題文のジャンルは固定化されていません。年度によって、「物語文」「随筆」「詩」「論説文」などが出題されます。比較的、「物語文」の出題率は高めです。問題文の文字数は昔に比べると多くなっていて、2022年度に至っては約12000字の問題文が出ています。2023年度は約9600字でした。2023年度は前年度より減っていますが、それでも十分多いです。
なお、漢字を書かせる問題もあるため、「とめ」「はね」「はらい」含めてきっちり書けるようにしておきましょう。
算数の出題傾向
算数は試験時間50分、85点満点です。大問5問で構成されていて、幅広い分野から出題されます。頻出単元として挙げられるのは「速さ」「立体図形」「平面図形」「規則性」「数の性質」あたりです。特に「立体図形」では「立体の切断」がよく出題されます。開成の算数は解答欄に答えだけではなく、式や考えも書き込む形式です。答えだけが出せればよいわけではなく、知識や計算力、思考力も問われます。
社会の出題傾向
社会は試験時間40分、70点満点です。大問の数は年度によって大きく開きがあり、2~5題ほどで構成されています。歴史・地理がやや多めで、全体では50~70問の出題です。時間的にタイトなので、素早く解き進めましょう。東京や関東の問題が出やすいので、対策しておく必要があります。東京や関東の歴史と地理は押さえておきましょう。
理科の出題傾向
理科は試験時間40分、70点満点です。大問は4題、小問は30題前後の構成となっています。理科は基礎的な問題も出題されるので、とれるところでしっかりと得点しておかなければなりません。計算問題や実験に関する問題が多く、それらの単元を押さえておく必要があります。
- 他校の過去問も積極的にやり込む
- 試験時間がタイトなので簡単なミスをしない様に心掛ける
開成中学に合格したい。どんな勉強が効果的?
開成中学に合格するためにはどういう勉強をするべきなのでしょうか。科目別に見ていきましょう。
国語の勉強法
国語にはどう取り組めばよいのでしょうか。
速読に慣れておく
国語は長文なので速読に慣れておく必要があります。読むのが遅いと問題を解くところまで手が回らず大きく失点しかねません。日頃から文章を読む習慣をつけましょう。低学年のうちから、さまざまな本に触れられる環境を整えておくことが大切です。
子供が「暇だなあ」と思ったときに、即座に読書に移れるよう、リビングに本棚を設置するのがおすすめです。図書館で借りた本でよいので、読んだことのない本が常に並んでいる状態にしてください。借りてきた本は子供の目につきやすい高さに陳列しておきましょう。おすすめは絵本棚です。表紙が見えると、読書欲を喚起されます。
他校の過去問にも挑戦
国語の読解文に慣れるためには、開成の過去問はもちろん、他校の過去問にも挑戦することをおすすめします。麻布や桜蔭、武蔵や筑駒など手ごわい読解文が出る学校の過去問に挑んでおきましょう。
記述力を伸ばそう
開成合格を勝ち取るには、記述力が欠かせません。記述は子供の多くが手こずる分野です。難関校を受験する子供でも、読みづらい冗長な文章を書く傾向にあります。訓練してもすぐに上手くなるわけではないので、腰を据えて取り組まなければなりません。
テキストや過去問の問題文は、必ず百字前後で要約する習慣をつけましょう。開成では百字から百五十字の記述が多く出題されます。問題文の要約は、本番に向けてよい練習になります。要約文は塾や家庭教師の先生に添削してもらい、どこが改善ポイントかを指導してもらいましょう。
難問は部分点を狙おう
比較的解きやすい問題で確実に点をとって、難問では部分点を狙うのがよいでしょう。トータルで合格点をとることを第一にしてください。
開成の国語は物語文が難しい
開成の国語はさまざまなジャンルから出題されるため、予測を立てるのが難しいです。「物語文」からの出題は「論説文」に比べて喜ぶ子供が多いですが、開成の「物語文」は解きづらいと言われます。
なぜなら、「物語文」では登場人物の心情を理解する必要があります。しかし、開成の扱う「物語文」に出てくる登場人物は、小学六年生の男子が理解しやすいタイプではないことがほとんどです。
自分と違う立場にある人間の考えや気持ちを理解するために、日頃から、他者への想像力を育みたいものです。特に中学受験をする子供たちは塾などで、経済力があり教育熱心な家庭環境にある子供とばかり接する傾向にあります。世の中にはいろんな人がいること、いろんな考え方があることを時事問題や読書を通して学んでおきましょう。
- 文章を読む習慣を付けて速読に慣れる
- 要約する習慣を付ける
- 自分と違う立場にいる人の気持ちを理解できるようにする
算数の勉強法
算数にはどう取り組めばよいのでしょうか。
算数の難問が解けるかが合否の分かれ目
算数の問題構成はだいたい五割近くが開成受験者なら解ける仕様になっています。残り五割のうちの三割五分が、解ける子供・解けない子供が分かれる問題で、残りがひと握りの子供しか解けない問題です。
そうなると、合格ラインに至るためには解ける子供と解けない子供がいる問題で、どれだけ高い正答率をたたき出せるかが問われます。ただし、これは問題の難易度が平均的な開成の難易度である場合です。
開成ではときどき、受験問題の難易度が低くなり、全体の正答率が高い数字になってしまう年度があります。そうした場合にはこのケースは当てはまらないので注意が必要です。
頻出問題を早いうちに押さえて
算数は頻出問題を早いうちに押さえておくようにしましょう。過去十年程度、開成の過去問を遡ると「速さ」が頻出単元だとわかります。他にも「立体図形」「数の性質」「平面図形」「場合の数」「論理・推理」といった単元は頻出です。集中的に基礎から応用までやり込んでおいてください。
「立体の切断」を解けるように
「立体の切断」は苦手な子供が多い単元です。できるだけ多くの問題を解いておきましょう。他校の過去問にも同様の問題はありますから、ぜひチャレンジしてください。「ダブル切断」の問題が出題されるケースもあります。立体の切断がされた投影図を描けるように仕上げておくとよいでしょう。それ以外にも、投影図がよく出題されます。
「立体図形」の類題を解くなら他校の過去問を
「立体図形」の問題の類題を解くなら、他校の過去問を解いてみるのがおすすめです。洛南・灘・東大寺といった関西圏の難関校で出た「立体図形」の問題はぜひ解いてみてください。難関校の受験問題では、他の難関校の受験問題をひと捻りして出題するケースが珍しくありません。開成の立体図形の問題は、洛南・灘・東大寺といった関西圏の学校の問題に相通じるところがあります。
「相似形」や「面積比」の問題をたくさんこなそう
「相似形」や「面積比」を取り入れた問題も多いですから、「立体図形」のみならず「平面図形」も隅々まで理解しておいてください。なお、図形の問題自体は特別難しいわけではありません。きっちり対策して臨めば得点源になる単元だといえます。
「規則性」「数の性質」は思考力を要求される
「規則性」「数の性質」は手の込んだ問題が多いです。問題を読み終わっていきなり計算に移れるような問題ではなく、問題文を読み込み整理しながら解いていくような問題が多いです。規則性を見抜くのに手間取るわけにはいきません。さまざまなパターンをこなして慣れておきましょう。
解き方も答えも解答欄に収められるよう
開成の算数は解き方と答えの両方を解答欄に収める必要性があります。途中式をすっ飛ばしても解けてしまうタイプの子供は気をつけなければなりません。開成の算数の解答欄は比較的広めです。解いた過程がきちんと相手に伝わるような書き方の練習をしておきましょう。採点する側が必要とする情報を過不足なく落とし込みます。
- いかに難問が解けるようになるかが鍵
- 「立体の切断」の類題を多く解く
- さまざまなパターンの問題文を読み込む
理科の勉強法
理科にはどう取り組めばよいのでしょうか。
頻出単元を把握しよう
頻出単元を把握して対策しましょう。生物なら「植物」や「昆虫」、地学なら「天体」や「気象」、物理なら「ばね」や「てこ」「滑車」、化学なら「気体の性質」や「水溶液」などが比較的よく出ています。問題集をやり込んで、難しい問題まで理解しておきましょう。
計算問題も解けるように
開成の理科の過去問をやればわかるとおり、理科では計算問題も出題されます。過去出てきた単元はチェックしておきましょう。
基本的な問題も多い
用語を問うような基本的な問題も多く出題されています。開成の受験者であれば、まず落とさないレベルです。点差が開かないよう、確実に点がとれるように仕上げておきましょう。
- 計算問題に慣れる
- 過去問に出てきた単元をチェックする
- 基本的な問題で確実に点を取れるようにする
社会の勉強法
社会にはどう取り組めばよいのでしょうか。
時間配分はタイト。難易度は高くない
時間配分はタイトですが、問題の難易度は決して高くありません。逆に言えば一問取りこぼせばそこで合否が分かれます。素早くミスなく処理できるよう練習しておきましょう。漢字の書き間違いにも注意が必要です。
統計資料の問題を解けるように
毎年、統計資料の問題が出題されている点が開成の特徴です。資料を読み解けるよう、まずは過去問を解いてみましょう。資料の中にあるヒントに気づけるかが大切です。
東京や関東圏の勉強を
東京都や関東圏についての問題がよく出るため、勉強しておきましょう。地理や歴史の観点から掘り下げていくタイプの問題が多いです。
- タイトな時間配分に慣れておく
- 統計資料の問題に慣れておく
- 東京都や関東圏における地理や歴史をよく覚えておく
開成は国語・算数で点差をつけよう
以前は開成の理科・社会は難しく、点差がつきやすいと言われていました。しかし、ここ最近は国語・算数のほうが、点差がつきやすくなっています。
国語では、物語文、随筆、詩、論説文などがランダムに出題されるため、対策をするのが難しいです。また、物語文では、自分とは全く異なる立場にある他者への想像力を求められる題材が多く、解きづらく感じる子供が少なくありません。
戦略的に合格ラインを目指すためには、まず算数の難問をある程度解けるように仕上げておくのがよいでしょう。そのためにも、算数の頻出単元をやり込んでおく必要があります。出題される問題には、他校の過去問をアレンジしたものもあるので、似たような問題を出している学校の過去問に触れておきましょう。
理科と社会はいかに得点を落とさないかが焦点です。近年は、難易度の高くない問題も出題されています。基本問題では当然のように、受験者は点を落としません。他の子供が点数を落としがちな問題で、点数がとれるようにするためには、理科ならば難しい計算問題、社会ならば統計資料の問題や地域の問題で得点する必要があります。
まずは開成の過去問をやり込んで、開成のカラーを理解するところから始めてください。その上で、ピンポイントで対策をとりましょう。