帰国子女が中学受験をするとなると、やはり相応の準備が必要です。情報を集めて、志望校を選定し、帰国生入試ならではの出題傾向に合わせて対策をしていかなければなりません。この記事では帰国子女が中学受験を勝ち抜くための勉強法や受験対策を紹介します。
中学受験における帰国子女の特別枠って?
帰国子女の特別枠とはどんなものなのでしょう。
一般枠で受けるよりも強みを生かせる
中学受験では、帰国子女の特別枠(以下帰国枠)を設けている学校があります。日本国内のカリキュラムで勉強してきたわけではない帰国子女にとって、一般枠はハードルが高いもの。
しかし、帰国枠なら強みを生かして受験できます。自分の行きたい学校が帰国枠を設けているのであれば、ぜひ受けてみることをおすすめします。
なお、帰国子女の入試は、帰国生入試と呼ばれるのが一般的です。よってこの記事でも、以降は帰国子女ではなく帰国生で表記します。
帰国枠の入試は早い
帰国枠の入試は一般の入試よりも早い時期から始まるので注意しましょう。
出願期間は十月から十二月あたり、試験日は十一月から一月あたりが一般的です。
帰国枠ではなにを求められるの?
帰国枠では、やはり語学力を求められることが多いです。帰国生とひと口にいっても、滞在期間の長さで語学力には大きく差が出ます。
帰国枠は激戦なので、ライバルに勝つためには高い語学力を維持している必要があります。なにより語学力をはかる基準はさまざまですから、自信をもって受けても、受験校の出題傾向が得意分野とはまるで違うこともあり得るのです。
求められる語学力は英語のみ?
帰国生の中には、当然非英語圏からの帰国生もたくさんいます。では、帰国枠で求められる語学力は英語以外にもあるのでしょうか。
非英語圏からの受験者の場合でも、英語を受けなければならない学校もあれば、国語・算数といった科目だけの学校もあります。
残念ながら英語以外の言語が必ずしも受験科目に組み込まれているわけではありません。その語学を採点できる先生がいないことには成立しないということなのでしょう。
ただし、東京学芸大学附属国際中等教育学校のように、幅広い選択肢のある語学入試を設けている学校もあります。
帰国生ならではの受験資格が必要って本当?
帰国枠で受験するためには、各学校の受験資格の基準をクリアしている必要があります。多くの学校が「海外滞在年数二年以内」「帰国後一年以内」といった基準です。細かいところは学校ごとに違うので、受験校に確認するようにしましょう。
受験資格をクリアしていない場合も、もしかすると対応してもらえるケースもあるかもしれません。あきらめないで一度問い合わせることをおすすめします。
- 帰国枠を設けている学校がある
- 一般入試よりも早い時期から始まるので注意が必要
- 高い語学力が求められる
- 英語以外の言語が受験科目に組み込まれている学校は多くない
- 各学校毎に受験資格の基準があるので事前に確認が必要
受験対策は志望校選びから!帰国枠のある中学校
帰国枠のある中学校を調べて、志望校を選定しなければなりません。日程的に受けられる学校を組み合わせてみましょう。ぜひ、「首都圏模試センター」の『入試カレンダー』を参考にしてください。帰国枠のある中学校の数は多いため、ここでは特に人気の学校を紹介します。
渋谷教育学園幕張中学校
渋谷教育学園幕張中学校は昔から帰国生を受け入れてきた学校で安心感があります。ハイレベルな学校ですが、受験に必要なのは英語と面接のみです。入学後、他の科目についていけないのではないかと不安になる家庭もあるでしょう。
しかし、渋谷教育学園幕張中学校では取り出し授業を行ってくれるので、その心配はありません。難関大学の合格率も高く、国内での実績はもとより、海外の大学への進学でも高い実績をあげています。ネイティブのカウンセラーが海外大学進学へのサポートをしてくれる盤石の体制です。
渋谷教育学園渋谷中学校
渋谷教育学園渋谷中学校も幕張中学校と同じく、帰国枠を設けています。ハイレベルな試験かつ募集人数は少なめであるため、しっかりとした受験対策が必要です。
英語の授業は北米の学校の形式を採用しています。進学においては、国内の難関大学および海外の難関大学に高い実績があり、人気の学校です。
慶應義塾湘南藤沢中等部
生徒の二割を帰国生が占める、帰国枠の募集人数が多い学校です。各学年にネイティブの担任がいるため、なにかあったときに心強いでしょう。ネイティブの教員による週六時間ある英語の授業も魅力的です。
プレゼンテーションの仕方から会話まで幅広く指導を受けられます。大半の生徒が慶応義塾大学に進学できる点もメリットでしょう。
広尾学園中学校
帰国生向けのインターナショナルコースがあり、アドバンストグループとスタンダードグループのふたつに分かれます。
アドバンストグループでは授業はすべて英語で進められるため、高い英語力が必要です。
それ以外のコースとしては医進・サイエンスコースと本科コースがあり、高校進学時に選べます。
攻玉社中学校
帰国枠での募集人数が四十人と多いため、入学後も自分と同じような友達に出会える点が利点です。攻玉社の特徴は、中学校の三年間は国際学級で学ぶというところでしょう。一般枠の子供たちとクラスが同じになるのは高校からです。ただし、優秀な子供は三年生から選抜枠に入ることが可能です。
また、帰国枠といっても英語力を含め学力は人それぞれ。各生徒のニーズに対応するため、レベル別に分割しながらの指導を行っていきます。攻玉社中学校は学習フォローの手厚い学校です。
三田国際学園中学校
三田国際学園中学校の特徴はインターナショナルクラスがあることです。Standard、Intermediate、Advancedの3クラスに分かれていて、帰国生はAdvancedクラスです。
インターナショナルクラスでは英語で行われる授業が週十回もあります。英語だけではなく、サイエンス教育やプログラミング教育にも注力している学校です。
洗足学園中学校
洗足学園中学校は女子校としては帰国枠を大きく設けている学校です。帰国生と一般生は最初クラス分けがされています。
英語はアメリカの学校のカリキュラムに合わせていて、実践力をつけるためにディスカッションが行われます。国語と数学の補習もあります。
東京学芸大学附属国際中等教育学校
入試は外国語作文・日本語作文・面接もしくは適性検査と面接です。東京学芸大学附属国際中等教育学校の外国語作文は英語だけではありません。フランス語、ドイツ語、スペイン語、中国語、韓国・朝鮮語を選択することが可能です。これほど広い選択肢を誇る学校はなかなかありません。
非英語圏からの帰国生で、語学力で勝負をしたい人にはお勧めの学校です。東京学芸大学附属国際中等教育学校の特徴として、高校に進むと二年生から二年間、希望者はIBのディプロマプログラムを受講できる点が挙げられます。
頌栄女子学院中学校
頌栄女子学院中学校はミッション系の女子高です。帰国生の受け入れは昔からやっているため、安心できる学校です。
帰国生は在校生の二割を占めていて、毎年百人近く合格者を出しています。ネイティブ教員による英語の授業が週六回あり、図書館には英語の本も置かれています。
聖光学院中学校
国内・国外ともに難関大学への高い進学実績を誇る横浜市の男子校です。帰国生には取り出し授業でフォローしてくれます。英語は週七回とみっちりやっています。
帰国枠に受かるための勉強はどのようにする?
帰国枠の競争率は高いことが多く、志望校に受かるのはそう簡単なことではありません。帰国枠に受かるためにはどのような勉強が必要なのでしょうか。
過去の出題傾向に合わせて対策を練る
英語力に自信のある家庭だと、英語対策をおざなりにしたまま受験本番を迎えてしまうケースがあります。しかし、英語がペラペラ話せることと英語で作文を書けることとは、似ているようでまるで違います。
日本語でも、おしゃべりが得意な人が作文を得意とするわけではないでしょう。その学校の求める能力に応えられなければなりません。高い競争率の中で合格を勝ち取るためには、行きたい学校の出題傾向に合わせた勉強が必要なのです。そのためには、過去問を分析し、対策を練る必要があります。
もちろん、英語だけではありません。各学校の算数や国語の出題レベルを知っておきましょう。学校では学ばないような応用問題がたくさん出る場合、それに合わせた勉強が必要です。いずれにせよ、独学で対策をするのはなかなか難しいので、教育サービスを活用することをおすすめします。
英検を受けておく
英検二級程度で英語試験が免除になる学校もあります。英検二級以上がとれそうなら受けておきましょう。これはテスト慣れという点でもおすすめです。英検一級レベルの単語がわかっていると、受験でも有利になります。
公立の小学校レベルの国語力を
やはり、海外に住んでいて不利になりがちなのは国語力です。一般枠の私立受験レベルの国語力をいきなり身に付けるのは難しいですから、公立小学校レベルの国語力を身に付けるところから始めましょう。問題集を解いたり、小説や時事の本や新聞を読んだりすることをおすすめします。
漢字の読み方にも苦戦するでしょうから、「ふりがな」がふってある本を選びましょう。日頃使わないことわざや慣用句も勉強しておきたいところです。まずは漫画の学習本あたりから手にとってみてはどうでしょうか。
作文対策をしよう
英語の作文にしろ、日本語の作文にしろ、わかりやすい文章を書けるようにする必要があります。作文の問題集を買ってやってみましょう。「いつ」「どこで」「誰が」「なにを」「どうした」がちゃんと伝わるように書けているか、チェックしてみてください。
日本語の作文の場合は、常体と敬体の混ざった文章を書いていないか、句点が不自然に多すぎないか、接続詞の使い方はぎこちなくないかなどに注意します。
作文は「最初からはうまく書けない」が当たり前です。早いうちから練習を始めて、少しずつレベルアップしていきましょう。毎日、日記をつけるという手もあります。日記をつけておけば、書く練習になるだけではなく、面接のときの話題を広げることもできるでしょう。
- 志望校の出題傾向に合わせた勉強が必須
- 独学での対策は難しい
- 英検二級程度を取っておくと良い
- 公立小学校レベルの国語力は身に付けておく
- 作文対策が重要
日々の勉強以外の受験対策でやるべきことは
日々の勉強以外の受験対策で外せないことは以下のとおりです。
面接対策をしよう
勉強とあわせて面接の練習もしておきましょう。面接は英語で面接をさせる学校もあれば、日本語で面接をさせる学校もあります。海外生活でどんな経験をしたのか、それがどんなふうに生かされているのか、どんなふうに将来につなげるつもりなのかを一度まとめておきましょう。作文の練習もかねて、書き出してみるとよいです。
帰国生模試を受けよう
帰国生入試に強い塾であるena国際部が「帰国生模試」を実施しています。首都圏の帰国生の半数は受けると言われている模試です。enaは海外展開している塾なので、校舎が近くにあればそこで受けられます。また、インターネット上で受験することも可能です。帰国生入試ならではの難易度や出題傾向をおさえた問題が出題されるため、受けておくとよいでしょう。
首都圏模試センターの帰国生入試NAVIで最新情報をゲットしよう
首都圏模試センターの帰国生入試NAVIは、先に紹介した入試カレンダー以外にも各学校の出題傾向や帰国生受け入れ校などさまざまな情報を載せています。このサイトをチェックしておくと、帰国生入試の情報を網羅的に把握することができるでしょう。特に出題傾向は学習方針を決める上でとても役立ちます。
志望校が決まったら、出題傾向に合わせた対策を
帰国生入試の仕組みを理解し、志望校を選定したら、出題傾向に合わせた対策を行っていきましょう。帰国生入試は学校にもよりますが、基本的にかなりの高倍率です。そのため、合格を勝ち取るためには過去問を分析し無駄のない勉強が必要となります。なお、帰国生入試の入試スタイルは多様なので、子供の得意そうな試験を行っている学校に絞って選ぶというのも手です。
いずれにせよ、模試は受けておくことをおすすめします。自分の立ち位置を知り、なにが足りないのかを見極めて対策するとよいでしょう。国語力の不足に頭を悩まされる家庭が多いですが、国語力は積み重ねなので新聞を読む習慣や日記を書く習慣を早いうちから身に付けておくと効果的です。合わせて作文対策も早めに始めておきましょう。
あとは面接対策のために、海外でのこれまでの経験やためになったことを言語化できるようにしておいてください。