中学受験において、なかなか成績が上がらず苦労しがちなのが国語です。学習の効果を実感できず、モチベーションを落としてしまう子供も多くいます。この記事では、中学受験における国語の勉強の仕方について紹介します。
低学年のうちに問題集を始めるべき?
低学年のうちから国語の問題集をたっぷりやり込んだほうがよいのでしょうか。
低学年のうちに訓練することも大切
低学年のうちから読解の問題に触れておくことは大切です。設問と解答欄を見て、求められている答えがなにかを予想できるようになるためには、ある程度の訓練が必要となります。解答欄に文字を書く作業も、一年生では欄から大きくはみ出す子供が多いでしょう。指定された字数を守るのだって、訓練しなければ身につきません。
「どのぐらいの字の大きさが適切なのか」「複数の行に分けるときはどう書くのがよいのか」など、親から見ればとるに足らないないことでも、ひとつずつ子供に覚えさせる必要があります。
毎日の読書の習慣を
問題集をやり込ませることは大切です。しかし、机に向かって問題集ばかりやらせるのは逆効果といえます。低学年のうちは、読書の習慣を定着化させることのほうが大切です。
五・六年生になると、机に向かう勉強がメインになるため、読書する時間もなかなかとれません。一年生だと「本は読み聞かせてもらうもの」という意識からなかなか脱却できない子供も多いでしょう。文字を追っているうちに疲れてしまう子供、行単位で読み飛ばしてしまう子供もたくさんいます。
いきなり物語文らしい物語文を読ませる必要はありません。絵本と本の中間ぐらいのもの、漫画テイストのものを選んで入口にするとよいです。たとえば絵本で「バーバパパシリーズ」が好きだった子供には「バーバパパのコミックえほんシリーズ」を読ませるといったようなステップを踏ませることをおすすめします。
高学年から始めたい国語における取り組みとは
高学年の国語では、問題集をただ解くだけではいけません。以下のような取り組みをしてみましょう。
解答欄をコピーしてファイリングしよう
高学年になると、問題集に直接書き込んで問題を解くことは少なくなるでしょう。やり直しができるようにノートに書きこむ子供がほとんどのはずです。
ただし、ノートと解答用紙では勝手が違います。解答用紙のフォーマットに答えを落とし込む練習もしておいたほうがよいです。解答用紙のコピーをとって、ファイリングしながら使うことをおすすめします。なお、ファイリングによる管理が不得意な子供は、無理をする必要はありません。基本的にはノートを使用して、過去問対策から解答用紙のフォーマットを使うようにしましょう。
文章を読む際、四年生までは二回音読を
四年生までは文章を読む際、通しで二回音読をさせることをおすすめします。文章を読むのが苦手な子供は黙読だと、無意識に読み飛ばしてしまいがちです。また、漢字の読み方を間違えて覚えていても黙読ではなかなか発覚しません。声に出して読むことでこうした問題はある程度解決できます。
受験が近づいてくると時間内にきっちり解くこと優先で、なかなか音読にまで手が回らないので、四年生までしっかり取り組むことをおすすめします。なお、五年生は一回音読、六年生は黙読がよいでしょう。もちろん、その子の成績によって対応は変わってきます。
要約の練習をしよう
読解文を子供に解かせる際、段落ごとに要約をさせるとよいトレーニングになります。下記のように一文程度の要約で大丈夫です。一度書き出してみてください。たとえば、森林の価値について書かれた文章があったとしましょう。
- 第一段落~第二段落
「なくてはならない森が失われつつあるのはどうしてかという問題提起」 - 第三段落
「現代における環境破壊の具体例」 - 第四段落
「環境破壊によって起こっていることの具体例」 - 第五段落
「作者が考えるこの先のありかた」
段落の内容を要約する練習を重ねると、無駄な文章を削ぎ落とす技術を身に付けることができます。また、書かれている文の中で大切なポイントはなにかを把握することが可能です。
国語の読解文って難しい?解く際の注意点
読解文に挑むときに注意したいポイントはなんでしょうか。
読解文に挑む際には印をつけよう
読解文に挑む際には印をつけながら解くとよいです。物語文であれば感情が表現されているキーワードをピックアップしたり、説明文であれば問題提起している部分を丸で囲んだりするよう促してみましょう。「これ」「あの」といった指示語がなにを指しているかを示すことも大切です。
印をつけながら効率よく読み込まないと、国語は時間が足りなくなりがちです。長い文章をただ読んだだけで、要点が記憶できる子供はひと握りでしょう。読み終えて設問にたどり着いたものの、もう一度頭から読み直さなければ一問も解けないなんて事態に陥りかねません。無駄なく解けるようにするため、印をつけながら解くことをおすすめします。
物語文の感情表現は比喩の場合もある
物語文を読み解く上でカギとなるのが、登場人物の感情表現です。問題文を通してキャラクターの感情を追いかけても、はっきりとした言葉では表現されていないケースも多いです。たとえば、作中で天気の描写が頻繁に出てきた場合、その天気の移り変わりに登場人物の心情を託しているのかもしれません。
たとえば、「雨が激しく地面に打ちつけられていた」と書かれているシーンでは、激しい悲しみや怒りが表現されているのかもしれません。逆に「突き抜けるように青い空」といった表現で、登場人物の明るい気持ちを表現している場合もあります。
「どんなこと」「どんな理由」。「どんな」の後に続く言葉
設問と向き合う上で、「今なにを尋ねられているのか」が重要になります。「どんなこと」と問われれば「〇〇なこと」と書く必要がありますし、「どんな理由」と問われれば「〇〇から・〇〇ため」といった書き方で答える必要があります。設問のキーワードを読み落とさないためにも、線を引いて問題の意図を確かめながら臨みましょう。
説明文では二項対立を手がかりに、書き手のスタンスを探ろう
説明文を読む際には、よく対立するふたつの用語が出てきます。たとえば、「人工」と「自然」、「個人」と「共同体」、「理想」と「現実」といったような二項対立です。こうした対立するキーワードが比較される文章を読む際、書き手のスタンスはどこにあるのかを探りながら読む必要があります。
書き手がはっきりとどちらかのキーワードに対して否定的なスタンスである場合もありますし、その中間に落としどころを探っている場合もあります。書き手のスタンスをつかめれば、説明文自体が難しい内容でもおおまかな流れは理解しやすいです。
説明文の意味がわからないときは問題提起と最後のほうを見直す
説明文を読んでまったく意味がつかめなかった場合は最初のほうの段落にある、問題提起の文章を見てください。問題提起の一文がない場合もありますが、多くの説明では「では、〇〇はどういうことなのでしょうか」といったような問いが投げかけられています。
その答えはたいてい、最後のほうの段落に用意されているはずです。気をつけなければならないのは「結論は最後の段落」に来るとは限らない点です。「最後のほう」ではあっても、「最後」ではない段落で結論を提示している説明文はたくさんあります。
「最後の段落の文章」を結論だと受け止めて、解答に落とし込む子供が毎年いますが、それは誤りです。最後の段落はあくまで補足で、それよりも前の段落で結論が書かれている場合も多いことを子供に教えておくとよいでしょう。
字数制限のある問題はできるだけきっちり埋める
字数制限のある問題の中には、かなり長い分量を想定しているものがあり、なかなか解答欄を埋められません。しかし、用意されたマスの半分程度しか埋められなければ、当然それは減点対象となります。全マスを埋めなくてもよいですが、ほとんど埋めるつもりで書く姿勢が必要です。
解いた後は先生からフィードバックを
国語の成績が停滞していて、その原因が記述の文章の書き方にある場合は、塾や家庭教師にみっちり指導してもらってください。文章力はすぐに身につくものではありません。しかし、記述において得点につながりやすい解答を書くコツはあります。
不要な文章を省く、指示語や文末表現、句読点、文体に気をつける等、注意するべきポイントはたくさんあります。周囲からその都度、フィードバックしてもらうことで初めて、マルをもらえる文章を書けるようになるものです。
- キーワードや問題提起している部分に印をつける
- 登場人物の感情表現を別の表現で表していることがある
- 問題の意図を確かめながら読み進める
- 二項対立はおおまかな流れは理解する手掛かりになる
- 最初のほうに「問題提起」最後のほうに「答え」があることが多い
- 字数制限のある問題はほとんど埋める
- 解いた後はその都度フィードバックしてもらう
語彙力を増やしておこう
国語を正しく理解するためには、語彙力を増やしておく必要性があります。
言葉を忘れないための工夫を
言葉だけ丸暗記しても長く頭に残りません。言葉の使い方を文脈の中で学んでいく必要があります。ある言葉を覚える際は、例文をひとつ考えてみるとよいです。その上で、次の単元に進んだタイミングで、前回覚えた言葉を忘れていないか、一度チェックしましょう。
言葉の意味を調べた際は類義語もあわせて覚える
言葉の意味を調べると、類義語もあわせて載っていることがあります。その場合は、両方覚えておきましょう。ひとつでも多くの言葉を覚えたほうがよいですし、あわせて覚えたほうが記憶にも残りやすいです。
ことわざや慣用句は小分けにして覚える
ことわざや慣用句を秋ごろから一気に覚える子供は少なくありませんが、受験前にまとめて詰め込むと忘れるのも早くなります。ことわざや慣用句は早いうちから小分けにして覚えましょう。早いうちから、ことわざや慣用句を扱う学習漫画を読ませておくことをおすすめします。少しでも忘れにくい方法で覚えていくとよいです。
わからない言葉が出てきたら文脈で判断しよう
どんなに勉強してもわからない言葉が出てくる可能性はあります。焦らず前後の文脈で意味を考える癖を身に付けさせましょう。
国語の見直しで気をつけたいこと
見直しの際には以下の点に気をつけてみてください。
意外と多い国語のケアレスミス
意外と国語はケアレスミスによる失点が起こりがちです。「〇〇に該当しないものを選びなさい」という設問に対し、「該当するもの」を選んでしまっているケース。ほかには設問に対して文末表現が適当ではないミスもよく見かけます。「該当するものをすべて選びなさい」なのに、答えはひとつだけだと勘違いしてしまうのもよくあるパターンです。設問に線を引きながら見直しをしてみてください。
漢字のとめ・はね・はらいができているかをチェックしよう
漢字を書く際、字のいい加減さで減点をされたくはないものです。自分の書いた字が「とめ」・「はね」・「はらい」ができているか、見直しの際に必ずチェックしてください。
筆圧が弱い人は、濃い鉛筆に変更しましょう。薄い字で書くと一層読みづらくなります。字が上手ではなくても丁寧に書いてあれば、減点されることは少ないです。
急いで字を書く癖のある子供の中には、書道のように字をつなげて書いてしまうケースを見かけますが、よくありません。落ち着いて書くよう心がけましょう。
国語が苦手な子供はコツをおさえておこう
国語が苦手な子供はたいてい「国語なんて、なにをやれば成績が上がるのかわからない科目だから」と言います。たしかに、国語が飛び抜けて得意な子供は、問題集をやり込んだからではなく日頃から広く本を読んでいます。しかし、受験に必要なレベルまでであれば、努力で到達できます。
音読と要約は日々のトレーニングの基本です。六年生になってから音読をする時間はとれないので、早めに取り組んでおいてください。その上で問題を解く際のノウハウを身に付けておく必要があります。具体的には、印をつけながら解くことや、文章や設問で注目すべきポイントを押さえておくこと、文末表現を間違えないこと、減点されない解答欄の書き方を理解することなどです。
広く問題に対応するためには語彙力が必要なので、早いうちから学習漫画で学ばせておくとよいでしょう。わからない言葉が出てきても焦らず文脈で読み解かせるようにしてください。ケアレスミスで失点しないよう見直しの癖をつけさせ、確実に一点ずつ上げていきましょう。