中学受験に挑戦するときに、悩むのが中学受験塾選びです。最難関レベルを目指す子供が選ぶ中学受験塾といえば、首都圏ならば第一にサピックスが挙げられます。塾事情に詳しい家庭なら、サピックスだけではなくグノーブルも候補に入れるかもしれません。この記事では、サピックス、グノーブルを中心に、中学受験塾を選ぶ基準について紹介します。
サピックスとグノーブル。それぞれどんな塾
サピックスとグノーブルは、どちらも最難関校レベルの合格実績をあげている塾です。以下詳しく見ていきましょう。
サピックスは最難関校を目指す子供に人気の大手塾
サピックスは首都圏を中心に展開する中学受験塾で、難関校以上を目指したい家庭であれば、一度は検討する塾です。サピックスの名前の由来はラテン語にあり、「正しく考える」を意味します。正しい思考力をもって、新たな時代を切り拓ける子供たちの育成を目指しています。サピックスの教育は、ただの詰め込み型の受験勉強ではないのです。
サピックスは最難関レベルの学校において圧倒的な実績をあげています。テキストは授業ごとの配布で、受験の出題傾向を受けて随時編集されるため、数年に一度しか改訂されない塾とは違い、常にアップデートされています。
また、サピックスには自習室がなく、授業で学んだ内容は家庭学習でしっかりと固めるサイクルです。そのため、宿題も多く、親がどれだけサポートできるかが問われがちです。親子ともに相応の負担を覚悟する必要があります。
グノーブルはサピックスのメインスタッフが立ち上げた塾
グノーブルはまだ立ち上げてからあまり年数の経っていない塾です。2006年にまず大学受験塾としてスタートし、その後、中学受験を担う講師陣を集めました。2022年に受験した子供たちが9期生にあたるので、ほかの大手塾に比べると歴史の浅さが目立ちます。しかし、グノーブルは初年度から高い実績をあげた稀有な塾であり、その背景には中山伸幸氏の存在があるといわれています。
中山氏はサピックスの創設者のひとりであり、大学受験コース「NEXUS」を立ち上げて東大合格実績を伸ばした人です。生徒からの信頼が厚く、中山氏を追って転塾する生徒も少なくありませんでした。
また、中学受験指導を担うメンバーの中には、サピックスの教務本部長だった眞田素氏もいて、培ってきたノウハウを生かしたカリキュラムを作成しています。
2022年度もサピックスの高い合格率は変わらず
サピックスといえば御三家合格を目指す家庭にとって欠かせない塾です。2022年度の合格実績がどうだったのかを見てみましょう。
2022年度の男子の御三家の合格実績は
サピックスの2022年度の合格実績を見てみましょう。男子の御三家におけるサピックス生の合格実績は、開成283人、麻布192人、武蔵65人。
2022年度、開成は416人に合格を出しています。単純に計算して合格者の約68パーセントをサピックスが占めている計算です。麻布が合格を出したのは371人。サピックス生の占める割合は約52パーセントになります。武蔵が合格を出したのは178人で、サピックス生の占める割合は約37パーセントです。
男子の御三家 | 合格者数 | 全体に占める割合 |
---|---|---|
開成 | 283人 | 約68% |
麻布 | 192人 | 約52% |
武蔵 | 65人 | 約37% |
この割合を見てもわかるとおり、男子の御三家、とりわけ開成を目指すのであれば、サピックスに入るのはおすすめの選択肢です。
2022年度の女子の御三家の合格実績は
女子御三家の合格実績は、桜蔭187人、女子学院128人、雙葉57人。人数だけ見ても、多くの合格者を出していることがわかります。
男子の御三家同様、割合でも見ていきましょう。2022年度、桜蔭が出した合格者数は289人です。サピックス生の占める割合は約65パーセントになります。女子学院が出した合格者数は276人で、サピックス生の占める割合は約46パーセント。2022年度、雙葉が出した合格者数は115人でサピックス生の占める割合は約50パーセントとなります。
女子の御三家 | 合格者数 | 全体に占める割合 |
---|---|---|
桜蔭 | 187人 | 約65% |
女子学院 | 128人 | 約46% |
雙葉 | 57人 | 約50% |
女子の御三家も男子の御三家と同様に、サピックス生が高い割合を占めている事実がわかります。
2022年度グノーブルもまた多くの合格者を出す
それでは次にグノーブルの合格実績を見ていきましょう。
2022年度の男子の御三家の合格実績は
グノーブル生は男子の御三家にどのぐらい受かっているのでしょうか。人数としては、開成は16人、麻布が17人、武蔵が4人です。人数だけ見ると少なく感じられるかもしれません。サピックスとは合格者数が桁からして違います。しかし、忘れてはいけないのはサピックスと違い、グノーブルは大手ではない点です。
2022年度の女子の御三家の合格実績は
人数としては、桜蔭が14人、女子学院が22人、雙葉が6人です。これも人数だけ見ると、サピックスとは桁からして違う少なさですが、規模の違いを考えれば当たり前ともいえます。
サピックスとの在籍者数の差から考えるグノーブルの実績
ただし、ここで注目したいのが9期生と呼ばれる、2022年度に受験したグノーブル生は504人でした。対するサピックスの第33期生は6,435人。約13倍の差があります。
在籍者数の比較 | |
グノーブル | 187人 (サピックスの約13分の1) |
---|---|
サピックス | 6,435人 |
割合で比較するために、グノーブルの合格者数を13倍してみましょう。すると、グノーブルの合格者数が侮れない人数であることがわかります。
麻布:17 × 13 = 221人
武蔵:4 × 13 = 52人
サピックスが開成283人、麻布192人、武蔵65人ですから、この計算だと麻布以外の合格者数はサピックスより少なめです。それでも、非常に高い実績なのは間違いありません。
女子の御三家も同様に計算してみましょう。グノーブルの合格者数を13倍にしてみます。
女子学院:22 × 13 = 286人
雙葉:6 × 13 = 78人
です。対するサピックスは桜蔭187人、女子学院128人、雙葉57人。桜蔭は大差ありませんし、女子学院と雙葉ではグノーブルの「13倍した合格者数」のほうがサピックスの合格者数を上回っています。
もちろん、単純に13倍したところで、正確な数字とはいえません。ただ、高い成果を上げているのは間違いないでしょう。
グノーブルの9期生は504人で、男子の御三家に合格した37人と女子の御三家に合格した42人を足すと79人です。つまり全体の約16%が男女の御三家のどこかに受かっているという驚異的な結果になります。サピックスは6435人中、男子の御三家に合格した人が540人、女子の御三家に合格した人が372人で、合わせて912人です。つまり全体の約14%が男子の御三家か女子の御三家に合格している計算になります。
塾名 (在籍者数) | 御三家への合格者数 | 合格者の割合 | ||
---|---|---|---|---|
男子 | 女子 | 合計 | ||
グノーブル (504人) | 37人 | 42人 | 79人 | 全体の約16% |
サピックス (6435人) | 540人 | 372人 | 912人 | 全体の約14% |
在籍者数の中で男子の御三家と女子の御三家に合格する割合を考えると、グノーブルのほうがやや高い結果となるのです。
サピックスとグノーブルで迷ったらどうすべき?
塾選びで迷ったら、サピックスとグノーブルの特徴を比較して、わが子に向いているほうを選びましょう。
サピックスとグノーブルの特徴を比較してみよう。
サピックスとグノーブルにはそれぞれ特徴があります。比べてみましょう。
カリキュラムや費用はほぼ同じ
サピックスのメインスタッフが立ち上げたのがグノーブルであるため、カリキュラムは一部を除いてほぼ同じです。授業ごとに塾が作った冊子をテキストにするスタイルも共通しています。費用に関してもほぼ同じぐらいで、大きな差はありません。
校舎数は大きく異なる
グノーブルの校舎は首都圏のみで11校と小規模です。サピックスの校舎は東京・神奈川・埼玉・千葉といった首都圏に43校舎あり、兵庫に2校舎、大阪に2校舎あります。
サピックスは大手ならではの緊張感
サピックスには大手中学受験塾ならではの緊張感があります。人数が多い分、競争が激しいですしクラスの入れ替わりに一喜一憂しなければなりません。グノーブルは小規模なので、サピックスほどの激戦が繰り広げられるわけではないです。小規模な分、生徒一人ひとりへの目配りはグノーブルのほうに期待できます。
わが子のタイプに合うのはどっち?
子供の性格と塾のタイプを照らし合わせて相性を考えるのは大切です。サピックスはハイレベルでハイペース、その一方で、そのハイレベルな内容を理解させるため、授業のクオリティも高い優れた塾です。ただし、勉強についていくためには本人の主体的な努力もかなり求められます。主体的な努力が求められるのはどの塾も同じですが、サピックスは授業で理解し家で復習するというスタイルを徹底しているため、塾頼みのタイプでは難しいです。また競争が激しいのでプレッシャーに弱いタイプにとっても厳しいでしょう。
一方、グノーブルは基本的にはサピックスと変わりませんが、少規模塾ならではの面倒見のよさがあります。競争を煽られることもあまりありません。逆にいえば、競争意識が強く、緊張感がないと頑張れないタイプには向かないでしょう。
どちらの塾が子供に合っているか、あるいはほかの塾のほうがよいのか、じっくりと考えてみてください。
また、子供の性格だけではなく家庭のサポート体制とかみ合っているかどうかも大切なポイントです。この辺りは塾が始まってみないと実際のところがよくわからないと考える家庭も多いでしょう。ただ、一度入塾して転塾するとなると、親子ともに大変なので、入塾前の面談時に「親になにが求められるのか」を細かく質問しておいたほうがよいです。そうしないと、入塾後に生活リズムとかみ合わないことを知って困惑する事態に陥りかねません。
サピックスとグノーブル以外の選択肢は?
サピックスとグノーブル以外の選択肢としては、どういう塾があるのでしょうか。
大手中学受験塾ならではの安心感。早稲田アカデミーや四谷大塚
サピックスとグノーブル以外にも中学受験塾はたくさんあります。他の大手中学受験塾の中で、難関校の合格率において高い実績を出しているのは早稲田アカデミー、次いで四谷大塚です。ただし、最難関校レベルとなると、サピックスやグノーブルのほうが圧倒的に合格率は高いと言わざるを得ません。
ただ、そうはいっても、サピックスから早稲田アカデミーや四谷大塚に転塾する生徒は少なくありません。サピックスにしろ、グノーブルにしろ、扱う内容がハイレベルなのに授業速度はハイペース。家庭学習が軌道に乗らなければとてもついていけない手ごわい塾です。どうしても「ついていけない」と感じる子供は出てきます。
授業進度についていけずに転塾する場合は、元の塾よりゆっくり進めてくれる塾でなければ難しいので、早稲田アカデミーや四谷大塚を選ぶのは正解です。なお、早稲田アカデミーと四谷大塚はどちらも「予習シリーズ」という評判のよいテキストを採用しています。
体育会系で知られるのが早稲田アカデミー、直営塾か提携塾によってカラーの違いがある四谷大塚、子供によって塾との相性も変わってくるので、慎重な検討が必要です。
大手でも日能研は難関校志望には向かない
大手中学受験塾と言われて、一番に日能研を思い浮かべる家庭は少なくないはずです。たしかに、日能研は数多くの生徒を擁する塾ですが、中堅校以下で実績を出している塾であるため、サピックスやグノーブルから転塾する場合、志望校の難易度を大きく下げることが前提となります。
中学受験塾の違いを知って、子供に合う塾を選ぼう
中学受験において、最難関校レベルを目指すのであれば、サピックスとグノーブルは塾選びの候補として有力です。サピックスは言わずと知れた大手ですし、グノーブルはサピックスの主要メンバーが立ちあげた塾として実績をあげています。
大手ならではの安心感で多くの生徒を御三家に送り込んでいるサピックス、小規模ながら高い御三家合格率を誇るグノーブル。どちらも魅力的な塾です。サピックスとグノーブルはカリキュラムや費用をはじめ共通点の多い塾ですが、違う点も多々あります。競争が熾烈で主体的に学習していくサピックスか、小規模ならではの面倒見のよさで競争がそこまで激しいわけではないグノーブルか。両塾の違いを知った上で、子供に合うのは果たしてどちらの塾かを検討するとよいでしょう。
中学受験塾がわが子に合うか合わないかの判断は難しいものです。実際、塾に通わせてみないとわからない部分もたくさんあります。しかし、合格実績や塾の費用、カリキュラム、校舎数、指導方針などの情報は事前に集めることが可能です。入塾する年だけではなく学年が上がってからのことまで視野に入れて、中学受験塾選びには慎重に臨むことをおすすめします。