中学受験業界を牽引する存在であるサピックスは、難関校の合格率で高い実績をあげています。しかし、その分、授業の進行はスピーディーで宿題も多いです。勉強についていけなくなる子供も少なくありません。この記事では、サピックスについていくための、国語・算数・理科・社会の勉強法を紹介します。
そもそもサピックスってどんな塾?
サピックスは大手中学受験塾の中でも、難関校の合格者数の多さで知られています。2022年度の開成の合格者におけるサピックス生の占有率が68%であることからも、それは明らかです。サピックスに次いで、大手の中で難関校に強い早稲田アカデミーの開成における占有率は27%ですから、どれほどサピックスが中学受験業界をリードする存在かがわかることでしょう。
サピックスではまとまったテキストを使用せず、冊子やプリントを用いた授業を行っています。受験に必要な問題を即反映させて常時アップデートしていくため、無駄がないカリキュラムとなっています。
その分、冊子やプリントの管理を杜撰にしていると、うまく勉強を進められなくなるため注意が必要です。
サピックスにおける国語の勉強法は?
サピックスにおける国語の勉強法を見ていきましょう。
サピックスで使う国語の教材は?
サピックスの国語で使うのは『デイリーサピックス』のAテキスト、Bテキストと呼ばれる冊子です。Aテキストは選択問題や抜き出し問題がまとめられています。対して、Bテキストは記述に特化した内容です。
Aテキストの構成はデイリーチェック・基礎力養成講座・読解演習講座・短文・漢字練習。Bテキストの構成は読解問題の本文・記述問題・解答用紙に加え、学年や授業によってはSAPIO添削教室となっています。
他の教材としては、『ウィークリーサピックス』『サンデーサピックス』『言葉ナビ(知識学習用教材)』などが挙げられます。
二種類の『デイリーサピックス』をどう活用する?
国語の『デイリーサピックス』は選択問題の多いAと記述問題が大半を占めるBの二種類に分かれるため、受験校の出題傾向に合わせて取り組む必要があります。
Bテキストはサピックスの授業内ですべてを扱うわけではありません。塾講師がいくつかピックアップして指導しています。もし、Bテキストで出題されるような、記述問題中心の学校を受けるのであれば自らやり込んでいくべきです。逆に、選択問題が中心の学校を受けるのであれば、Bテキストに重きを置く必要はありません。
サピックスのBテキストは、人によっては文章を読むだけでも大変かもしれません。しかし、記述問題のテキストとしてクオリティの高い仕上がりになっています。記述問題中心の学校を受験予定の子供で、記述が苦手なのであればテキストBをやり込みましょう。
受験校の出題傾向に合わせてBテキストのやり込み度合いを決めましょう。
もし受ける予定の学校が記述問題中心の出題傾向であれば、しっかりとやり込む必要があります。
『てんさく教室』での指摘を生かして
サピックスでは『てんさく教室』があります。子供たちの文章を先生が細かく添削して、フィードバックしてくれる教室です。記述が苦手な子供の書く文章には、たくさんの減点ポイントがあります。
しかし、その減点ポイントを家庭で的確に指摘するのは難しいですし、模範解答を見ても自分の解答の妥当性はよくわからないでしょう。先生たちがプロの目でフィードバックしてくれるのは、記述力アップに効果的です。
返却された文章は必ず熟読しましょう。文体や文末表現をはじめとする基本的なルールや、文章の取捨選択の仕方を学ぶことをおすすめします。『てんさく教室』自体は回数が少ないので、一回一回フィードバックされた内容をきちんとチェックする姿勢が大切です。そうしないと、同じミスを何度も繰り返しかねないためです。
中には、『てんさく教室』のフィードバックよりも、通常の授業のほうが厳しく見てくれる教室もあるようです。授業での指摘が丁寧ならば、それを生かさない手はありません。
いずれにせよ指摘された箇所は親子で共有しておきましょう。そのプロセスを挟むだけでも、記憶に残ります。
プロの目で添削されたフィードバックされた文章を必ず熟読しましょう。
文章を書くにあたっての基本的なルールや取捨選択の仕方を学ぶことで記憶力アップにつながり、同じミスの繰り返し防止に役立ちます。
実施される回数が少ないので、毎回必ず親子で共有する習慣を付けてより記憶に残るようにしましょう。
サピックスにおける算数の勉強法は?
サピックスにおける算数の勉強法を見ていきましょう。
サピックスで使う算数の教材は?
サピックスで使う算数の教材としては、『デイリーサピックス』『デイリーサポート』『ウィークリーサピックス』『サンデーサピックス』『基礎力トレーニング』『基礎力定着テスト』などが挙げられます。それ以外には分野別問題集である『ベイシック』や『サピックス分野別シリーズ算数標準20回テスト』といった教材もあります。
サピックスの問題集はどのように進めるべき?
『基礎力トレーニング』は、その名のとおり基礎なので欠かさずやって基礎力を定着化させましょう。『基礎力トレーニング』を確実に解けるようにしたら、『デイリーサピックス』や『デイリーサポート』に移ります。『デイリーサピックス』や『デイリーサポート』をどのレベルまでやり込むかは子供の学力次第です。
まずは基礎固めとして『デイリーサポート』A・Bまで解けるようにしてください。αクラスを目指すのであれば、『デイリーサポート』のE問題まで解ける必要があります。『デイリーサピックス』は☆の数で難易度分けされているので、塾の先生にどの問題まで解く必要があるのかを確認するようにしましょう。自分の志望校にとって、捨て問に当たるようなハイレベルな問題もたくさんあります。受験勉強ではどれだけ勉強するかはもちろん、どれだけ無駄な勉強を省けるかも重要です。
苦手な単元がはっきりしている場合は、分野別問題集『ベイシック』を活用します。特に志望校の頻出単元は確実に押さえておかなければなりません。
- 基礎力トレーニング』を確実に解けるようにする
- 基礎固めとして『デイリーサポート』A・Bまで解けるようにする
- 捨て問に当たるハイレベルな問題を講師に選定してもらう
- 苦手な単元を分野別問題集『ベイシック』を活用して克服する
算数はつまずく子供の多い科目
他塾でもそうですが、中学受験勉強においてつまずく子供が多い科目です。算数で失敗する子供に多いパターンは、基礎が中途半端なうちに難しい問題に手を出し、一問解くにも時間がかかってしまうケースです。授業プリントの『導入と基本』を理解するところから始めましょう。この場合の理解とは、類題を自力で解けるまで仕上げた状態を指します。
同じ問題を何度もやり込んでいると、意味を理解しないまま解法を覚え込んでしまいがちです。算数は暗記科目ではないので、その状態を「解ける」にカウントしないようにする必要があります。
サピックスにおける理科の勉強法は?
サピックスにおける理科の勉強法を見ていきましょう。
サピックスが使う理科の教材は?
四・五年生では毎日基礎力トレーニングの宿題が出ます。また、それ以外にも『デイリーサピックス』や『サンデーサピックス』『ウィークリーサピックス』。まとめ教材である『コアプラス』があります。すべてを仕上げるのは難しいほどのボリュームです。
サピックスの理科はどう学んでいくべき?
授業が終わったら改めてテキストを読み直し、ノートを確認しましょう。次の日から問題を解きますが、他の教科との兼ね合いもあるため、毎日コツコツ分けて進めていきます。
理科は生物分野や地学分野で覚えなければいけない知識も多いため、反復学習が大切です。そのため、基礎トレをはじめ、毎日少しずつ繰り返し進めていくスタイルをおすすめします。間が空くと、記憶は定着化しづらいためです。理科や社会は国語や算数に比べると、毎日取り組む対象になりづらい教科と言えます。しかし、理想としては全教科小分けに進めていくほうがよいです。
小分けにすると言っても、一週間の中で最低でも問題を二周する時間がとれるのが理想です。よく一週間に一周やって終わるタイプの子供がいますが、そのやり方だと半端な理解のまま次の単元に行ってしまうのでよくありません。締めとして該当単元のポイントチェックや『コアプラス』をやってどのぐらいできるか確認しておきましょう。もちろん、間違えた部分はしっかり覚え直します。
思考力の必要な問題は口頭で解説してもらう
電流やてこ、滑車、輪軸など子供が苦手とする単元は、数学的要素があるところが多いです。なんとなく解いてわかったような気になるのは危険なので、理解のおぼつかない単元があれば口頭で説明させてみましょう。スラスラと相手に解法を伝えられて初めて、解き方を本当の意味で理解したといえます。記憶の定着化にもよいので、ぜひ試してみてください。
- 数学的要素が多い分、なんとなくで解いてしまうと記憶が定着しない
- 記憶が定着化しにくい科目のため毎日コツコツ反復学習をすることが大事
- 問題を一週間に二周する時間を確保できるようにする
サピックスにおける社会の勉強法は?
サピックスにおける社会の勉強法を見ていきましょう。
サピックスが使う社会の教材は?
サピックスが使う社会の教材は、『デイリーサピックス』『ウィークリーサピックス』『サンデーサピックス』『社会コアプラス』などです。他には『白地図トレーニング』などの教材があります。理科同様、量が多いためこなすのが大変です。
サピックスの社会はどう学んでいくべき?
社会は地理・歴史・公民・時事の四つがあります。サピックスの教材は何度も反復しながら覚えていく作りです。
配布された教材を一週間かけて小分けに仕上げていきましょう。基本的な流れは理科と同様です。その上で、社会を固めるためには、地理から取り組むことをおすすめします。まず、日本地図を隅々まで頭に入れます。県名、県庁所在地はもちろん、平野や川や山といった情報もすべて覚えてください。『白地図トレーニング』を活用するとよいです。その上で、結び付けていきます。
日本地図がきっちり頭に入っていることは大切です。地理を理解するとその土地の特徴を切り口にして歴史も理解しやすくなります。
地理がある程度仕上がったら歴史、続いて公民です。時事問題は六年生の後半で固めましょう。いきなり暗記事項として覚えさせるのではなく、家庭内でも日頃から興味を持つよう促していくとよいです。
- とにかくまずは地理から取り組む
- 地理がある程度仕上がってから、歴史、公民、時事問題、と進める
まとめ教材『コアプラス』を使いこなして
『コアプラス』には受験に必要な内容がまとまっているので、完璧に仕上げましょう。まとめ教材は何周もやり込んでいくことが前提です。いったん仕上がったと思っていても、間が空けば抜けてしまうものなので、定期的にやり直していきます。基本的に間違えた問題のやり直しが最優先ですが、社会の場合、合っていた問題も時間が経てば忘れてしまうケースが多いので、全体的なやり直しも行う必要があります。
『コアプラス』は答えの欄を隠して使えるタイプの問題集なので、最初に解く際から書き込んで大丈夫です。ただし、うっかり誤答を残していると次解いた際にそのまま覚えてしまいかねないので、採点時には気をつけましょう。特に漢字の書き間違いには注意です。社会も漢字が間違っていれば容赦なくバツがつきます。採点時には模範解答としっかり見比べてください。
なお、コアプラスは基本的に用語を覚える教材ですが、難関校や上位校では記述問題が出題されます。そうなると、答えの用語を見て問題文に書かれている内容を説明できるところまで仕上げなければなりません。説明は口頭で行うと記憶に残りやすいです。
学力に合わせて取り組むべき内容を絞り込んでみよう
曜日ごとに違う科目を勉強するのもよいですが、記憶の定着化を図るなら、すべての科目を毎日少しずつ進めたいものです。一週間単位で各科目の問題を二周解いて仕上げるためには、一日にどれだけなにを勉強すればよいのかを考えましょう。授業を受けたその週が該当の単元の基礎を固めるチャンスです。一週間のルーティンが確立できていないと、のちのちしわ寄せが一気にきて追いつけなくなります。
スケジューリングをするにあたっては、自身の学力と相談する姿勢が大切です。学力の高い子供の解くスピードは速いので、一日にこなせる量も多く、満足のいく計画が立てられるでしょう。しかし、学力がまだそこまでではない場合は、破綻しない計画を作ることがなによりも大切です。塾とどのレベルまで仕上げればよいのか相談しながら、一週間の学習内容を決めて、それを日割にしてください。徐々に学力がアップするにつれて、やれる内容は増えていくので焦りは禁物です。
サピックスは配布物が多く宿題も多いので、目の前の内容をこなすだけで手いっぱいになり、長期的なスパンを見据えられず成績が上がらない悪循環に陥りがちです。それを避けるためにも、「今はこのレベルまで」と割り切り、その上で周回して知識を固めていくことをおすすめします。