家庭教師は、家庭教師派遣センターを通して契約するケースもあれば、個人で契約するケースもあります。個人契約には個人契約ならではの利点があることは確かです。しかし、個人間でのやりとりである以上、ときには思いがけないトラブルが発生することもあります。この記事では、家庭教師の個人契約における注意点とトラブルへの対処法を紹介します。
家庭教師と個人契約を結ぶ方法が知りたい!
家庭教師と契約する方法はいくつかあります。一番手軽なのが個人契約専用の掲示板やマッチングサービスの利用です。オンラインで手続きできるため、「必要だ」と思ったときにすぐアクセスできます。
プロ家庭教師として広く名前が知れていている先生を希望するなら、個人サイトを立ち上げている場合が多いですから、そこを窓口に契約することも可能でしょう。
それ以外の手段として多いのが、知人からの紹介です。紹介であれば、指導実績や先生の性格について詳しく話を聞いてから検討することができます。
あとは、派遣会社経由で紹介された家庭教師に個人契約へ移行するようお願いするパターンもあるでしょう。ただし、こちらは規約違反になるケースが大半なので注意が必要です。
家庭教師と個人契約を結ぶにあたり、各方法の注意点は
家庭教師と個人契約を結ぶに際しての注意点は以下のとおりです。
個人契約専用掲示板やマッチングサービスを利用する場合
誤解されがちですが、個人契約専用掲示板はあくまで掲示板であり、契約の責任の一切をとりません。家庭教師派遣センターを介する場合と大きく条件が異なります。仲介手数料を取らない分、あくまで場を提供しているだけなのが掲示板なのです。
もちろん、教師交代サービスなどもありません。そのため、先生との相性が悪かった場合は解約し、イチから自力で新しい先生を探す必要があります。
マッチングサービスは無料のものと有料のものがあり、サービスの質はバラバラです。有料サービスの中には、何度でも先生を紹介してくれるところもあります。
オンラインで家庭教師を探す場合は、保護者自身が「家庭教師派遣センター」の役割を果たすつもりで、厳しくチェックしてください。
知人からの紹介で家庭教師をお願いする場合
友人や知人に紹介をお願いするパターンもあります。紹介であれば、あらかじめ「どんな先生でどんな実績があるか」を知ることができるでしょう。家庭教師の側にも「紹介元の顔を潰さないようにしよう」という心理が働きますから、比較的きちんとした対応が臨めます。ただし、どんなに知人が「よい先生だ」とおすすめしてきたとしても、「わが子にとってのよい先生かはわからない」ことを理解しておいたほうがよいでしょう。先生と生徒にも相性がありますから、情報を鵜呑みにしないことが大切です。
正式に依頼する前に、先生との面談の場を設け、信頼に足る人物かどうか見極めるようにしてください。
名の知れたプロの家庭教師にお願いする場合
名の知れたプロの家庭教師にお願いすれば、確かな実績で安心です。しかし、人気の先生ですから当然費用は高くつきます。交通費などの手当ても含め、しっかりと予算計画を立てた上で依頼するようにしましょう。
また、有名な先生には抱えている生徒がたくさんいます。本業以外にも講演やメディア出演など、多忙なスケジュールをこなしているケースが多いです。ちゃんとわが子をサポートしてくれる先生ならばよいですが、任せきりにしていると、いつの間にか対応が疎かになっている可能性もあります。必ず授業後にはわが子の進捗をフィードバックしてもらいましょう。
派遣されている家庭教師と個人契約する場合
家庭教師派遣センターに紹介された先生を気に入って、個人契約に移行する家庭もあります。しかし、多くは規約違反として違約金が課せられるため注意が必要です。
- 家庭教師と個人契約を結ぶ場合は親が家庭教師派遣センターの役割を担う
- 知人からの紹介の場合は自分の子供との相性を見極める
- 名の知れたプロの家庭教師に依頼する場合は高額になることと対応を疎かにされない様に毎回フィードバックを貰う
- 家庭教師派遣センターの先生を引き抜いて個人契約にすると規約違反で違反金が発生する可能性がある
個人契約でのトラブル防止!家庭教師との面談で必須の質問
個人契約でのトラブルを防ぐためには、初回面談時にたくさん質問をしましょう。聞くべきことは以下のとおりです。
学歴や指導可能教科、指導実績
まずは履歴書を提出してもらいましょう。学生の場合は、学生証を確認させてもらってください。子供が目指しているレベルを共有し、指導可能な教科についてヒアリングしましょう。
「学校の成績を多少上げたい」「学習習慣をつけたい」程度であれば、指導実績はそこそこでも大丈夫ですが、「第一志望校合格のため」なのであれば、妥協はできません。家庭教師の指導スキルが大きく合否に影響します。
当然のことながら、受験指導は高学歴なだけではできません。例年の受験問題の出題傾向を細かく分析できていて、どの時期からどのあたりを対策するか、的確に指示を出せる必要があります。こちらが求めるノウハウのある先生かどうかを確認しましょう。
家庭教師に入れる曜日と時間帯
決まった曜日だけではなく、テスト前や長期休暇中、変則的に授業をしてほしい家庭は多いものです。体調不良時や予定があった際の振り替えについても質問しておきましょう。
人気のある先生は忙しいですし、学生の場合もほかの予定が入りがちです。どのぐらいスケジュールに融通が利くのかを事前に確認しておくことをおすすめします。
家庭教師の交通費と授業料
時給いくらぐらいを希望しているのか、交通費はどのぐらいかかるのかを確認しましょう。特に交通費は、つい計算に入れるのを忘れてしまいがちです。交通の便が悪く乗り換えが多いなどで高くかさむ先生もいることでしょう。
いくらかかるのか、いつ払うのか、振り込みか手渡しかなどを決めておいてください。できれば額と支払日を明記した書面を作成しましょう。
どのぐらいの期間、続けられそうか
予定は未定ですから、「いつまで」と確かなことは言えないでしょう。しかし、現時点での見通しなら答えられるはずです。たとえば、先生が現在大学院生で、いずれほかの地域に移る予定がある場合もあります。先生側の事情を把握しておきましょう。
子供の状況の共有と指導方針の決定
家庭教師派遣センターが間に入ってくれない分、子供の状況や目標を直接丁寧に説明する必要があります。過去のテスト結果や通知表など、判断材料になるものを用意しておきましょう。一度親子で見直してなにができていないのかを伝えるとよいです。
さらに、家庭教師開始一カ月の時点で、今後の目標や大まかな学習計画を尋ねてみてください。だいたい子供の実力がどのあたりかを把握できたはずですから、ある程度の目安を教えてくれるはずです。
中には対処療法的に授業を進める先生もいます。しかし、言い換えればそれは子供に主導権をとられているということです。学校や塾の補習としての位置づけならば、対処療法でもよいですが、そうでなければ先生が主導権をとって指導に当たらなければなりません。
フィードバッグの仕方について
「授業後、先生から口頭で報告を受けるのか」「書類にまとめてもらうのか」などを最初に決めておきましょう。口頭で報告を受ける場合は、家庭側で専用ノートを用意し、その都度メモをとるようにしてください。今後の教育方針を決める上でのよい判断材料になります。
書類の提出をお願いする場合は、授業中、子供が問題を解いている間に記入してもらいましょう。授業時間外に書いてもらう場合は、その分の時給を払うようにするとよいです。出してもらった書類はファイリングしておくと、確認したいことがあるときに安心でしょう。
- 履歴書・職務経歴書など実績が分かるものとノウハウの有無
- 細かいスケジュールの融通と交通費も含めた費用の詳細
- 契約をいつまで続けられるかの予定
- 開始後に子供の現状を把握したうえでの学習計画
- フィードバックの手段
こんな家庭教師はダメ! 困った先生の特徴と対処法は
個人契約だからこそ、慎重に家庭教師を見極める必要があります。困った先生の特徴とそれぞれの対処法は以下のとおりです。
基本的なマナーが守れない先生
「開始時間過ぎてから来る」「目を合わせて挨拶をしない」「遅れる際や振り替えの連絡がギリギリ」など、マナーが守れない先生は意外と多いです。
そういうときはどう改善してほしいのかを端的に伝えましょう。嫌味にならないよう溜め込まず、その場その場で「これはダメ」だと先生にフィードバックしてください。家庭教師派遣センターが間に入っていないので、自分たちでノーの声をあげるしかありません。直接の個人契約だとつい気が緩んでしまう先生もいるので、「ここはちゃんとしてほしい」という線引きをしっかりして、その都度伝えるようにしましょう。
魅力的な授業ができない先生
いかに高学歴な家庭教師であっても、教え方が上手くなければ、子供はあっという間に飽きてしまいます。「どうやって子供の興味を引き出すか」は家庭教師をする上で最重要のノウハウですが、中には一本調子な教え方をする家庭教師もいます。
子供が「授業が面白くない」と訴えてきたら、授業に親が同席する機会を一度作りましょう。親の目から見て提供されているサービスが合格点かどうか、判断を下さなければなりません。
一番よいのは初回の授業を見学することです。最初の授業を採用試験的な位置づけにすることをおすすめします。ただし、その結果、不採用となっても、初回にかかった交通費や時給は支払うようにしてください。
加えて、初回の授業が採用試験の位置づけであり、保護者も同席する旨をあらかじめ先生に伝えておきましょう。
子供との距離感が間違っている先生
先生として子供と接するわけですから、立場を意識した距離感は大切です。一見、ざっくばらんに見えても、緊張感のある関係を築く義務が、先生の側にはあります。
気安いこと自体は悪くもなんともありません。ここで問われるのは、生徒と向き合ったときに主導権を先生の側が手放してしまっていないかどうかです。主導権を手放してしまうと、いわゆるなれ合いに陥ります。
おとなしい子供やまじめな子供は例外ですが、ほとんどの子供は先生と「友達のような関係」を築こうとするものです。そこで、一線を引けるかどうかで、先生の技量が問われます。カギとなるのは初回の授業です。このときに「子供から慕ってもらう」「子供との緊張感ある関係をつくる」の両方に成功しなければなりません。
授業を通して、先生側のスタンスを子供に理解してもらう必要性があるのです。それができない先生はいずれ子供に侮られます。子供とちょうどよい距離感をキープできる先生かどうか、まずはチェックしましょう。
家庭学習の指示出しができない先生
どんなによい授業をする先生であっても、授業だけで子供の成績を上げるのはほぼ無理です。授業外の時間にも、子供がしっかり勉強できたかどうかで成績差はつきます。つまり、家庭学習をどう定着化させるかが問われるのです。
成績を上げたい子供には、適切な範囲の宿題を適切な分量だけ課していく必要があります。学習サイクルを作り、軌道に乗せてあげなければなりません。先生が子供の弱点や理解力を見極めて、スケジューリングをするのです。計画表を作成し、そのとおり勉強を進めるようにします。やるべきことを可視化することが大切です。
家庭教師派遣センターを通した依頼であれば、先生が授業計画表や報告書をいちいち書いてくれるケースが大半です。しかし、個人契約ではなかなかそうはいきません。授業計画表は必要に応じて先生に依頼するか、家庭がフォーマットを用意するようにしましょう。先生に対して「適当な授業はおことわり」という牽制にもなるでしょう。
- 基本的なマナーが守れていない先生には線引きをして都度注意を促す
- 授業が魅力的でない先生は来てもらった分の費用を全て支払ったうえで解約する
- 子供との距離感を間違えている先生かどうかは数回見て判断する
- 自分から家庭学習の指示出しが出来ない先生にはやるべきことを表にするなど可視化してもらう
個人契約の家庭教師に潜むリスク。把握した上で対処を
個人契約の家庭教師には、相応のリスクが伴います。とりわけ「全くの初対面」の先生に見てもらうのであれば、時間と手間をかけて、どんな先生かチェックするようにしましょう。子供の成績と安全のために、保護者が目を光らせることが大切なのです。トラブルが起きないよう事前にルールを取り決めておきましょう。
一方で、個人契約にはメリットもたくさんあります。融通が利きやすかったり、費用が安く抑えられたりするのは個人契約の利点です。間に入る家庭教師派遣センターによっては、「違約金があるの?」「そんなにマージンが高いの?」とびっくりしてしまうようなケースもないとはいえません。
ただ、家庭教師に問題があった場合、責任をもって即座に対処してくれるわけですから、家庭教師派遣センターが頼りになる存在なのは間違いありません。個人契約で家庭教師をお願いする場合は、家庭が家庭教師派遣センターの代わりとなって対処する覚悟が必要です。子供によりよい教育がなされるよう、親が環境を整えてあげることをおすすめします。