日能研は全国に153教室を展開する大手中学受験塾です。対話型授業のスタイルを導入し、復習に重きを置いた学習法を採用しています。この記事では日能研で中学受験対策をするメリットについて紹介します。
日能研ってどんな塾?
数ある中学受験塾の中で、日能研はどんな特徴を持った塾なのでしょうか。
日能研は生徒数が最多の中学受験塾
日能研は北は北海道、南は沖縄まで全国展開していて、中学受験塾の中では最多の生徒数を誇ります。街中で教室を見かけたことがある人も多いはずです。
日能研は中堅校受験に強い
日能研は、中学受験塾の中では比較的ゆっくりと授業を進める傾向にある塾です。そのため「中学受験に必要な範囲を終える時期が六年生の七月」とかなり遅めの傾向にあります。一周目にじっくりと時間をかけることで、深い理解を促し、授業についていけなくなる子供を減らしているのです。
一人ひとりが着実についていけるペースを作り出すからこそ、日能研は中堅校に強いのです。上位校から下位校まで対応してくれますが、最難関校レベルの合格実績はあまりよくありません。
日能研はクラス替えの頻度が少ない
中学受験では生徒同士を競争させることで成績の向上を図ります。そのための手段としてよく採用されるのが、頻繁なクラス替えです。しかし、日能研ではクラス替えはあまり多くありません。
これは競争心を煽らないためではありません。実際、教室にもよりますが、テストのたびに成績順の席替えをして、順位を可視化します。では、なぜクラス替えが少ないのかというと、生徒を手厚くフォローしていくためです。
日能研は学力において平均的なレベルの子供が多いため、塾側がしっかりとフォローに回ります。サピックスのように優秀な子供を集めて、クオリティの高い指導をし、「ついてこられる子供はついてきて」というタイプの塾ではありません。
日能研は復習を重視する塾
日能研は、サピックスなどの塾と同様、復習を重視した学習スタイルを採用しています。両者の違いは、難関校受験で有名なサピックスには自習室はありませんが、日能研には自習室があります。高学年になると、自習室を活用して授業内容を復習する子供も多いです。家庭での学習が苦手な子供は、積極的に活用するとよいでしょう。
中学受験の学習内容はかなり高度であり、子供が自力で予習をしていこうにも、よほど理解力のある子供でなければ難しいでしょう。問題集とのにらみ合いでタイムロスばかりが大きくなります。日能研は授業を前提とした復習型で、関連ある単元を順番に進めていくため、理解しやすいカリキュラム構成となっています。
日能研の学びは三段階
日能研は学年が上がるに従って、三段階のステップがあります。一年生から三年生まではイマジネーションとクリエイティビティを育てる「低学年の学び」、四年生から六年生前期では知識と知識のつながりを獲得する「系統学習の学び」、六年生後期では実践的な学習で「合格力を鍛える」という流れです。徐々にステップアップしていきます。
日能研は持続可能な力を育成
日能研は中学受験塾として志望校合格のためのノウハウを伝えています。しかし、ただ志望校に合格することだけを目的としているわけではありません。進学してからも社会に出てからも通用する「チカラ」を育てることを目標に掲げています。未来の社会を変えていく子供の助けになることを目指しているのです。
日能研のメリットってなに?
日能研のメリットはどんなところにあるかを紹介します。
転塾先に最適な塾側のフォローの手厚さ
日能研は、サピックスなどの難関校受験に強い塾から転塾してくる子供が多いです。ハイペース・ハイレベルなサピックスは、どうしても授業についていけない子供が出やすい傾向にあります。
こうした塾についていけなかった子供が受験に向けて立て直しを図るのに、日能研の面倒見のよさは最適です。面談の回数も多く、学習の悩みを抱えているときにはサポートしてくれます。
授業についていけなかった子供の転塾先は、授業ペースがゆっくりめなほうがよいので、そういった点でも日能研のカリキュラムは望ましいでしょう。宿題も他の塾と比べるとあまり多くはありません。学習習慣を軌道に乗せやすいと言えます。
日能研は費用が安い
大手中学受験塾の中でも、日能研は費用が安めです。たとえば、2021年のサピックスの六年生の授業料は月々59,950円です。しかし、2021年前期の日能研は月々32,076円と安いです。
ただし、日能研はテスト代をはじめ、授業料以外でかかる費用も多いです。それでも、合計を出すと、大手塾の中では早稲田アカデミーと並んで安くなります。どんな特別講習を受けるかにもよりますが、六年生一年間でもサピックスとはだいたい二十万近く差がつくケースが多いです。
特待生制度があり授業料が免除される
日能研には特待生制度があり、朝日新聞社主宰の「未来をつくる学びテスト」や無料の全国テストを通して成績優秀者の授業料を免除しています。中学受験は塾代だけでもかなりの出費になります。成績に自信がある家庭は、日能研の制度を活用するのをおすすめします。
テスト結果がデータ化されている
日能研はテスト結果が出るのが早い塾です。デジタル化されていて、テストを受けて二日ぐらいで自分の結果にアクセスできます。生徒の人数も多いので、塾として膨大なデータを持っている点も心強いです。
対話型の授業であるため、一方通行にならない
生徒に発話を促す授業スタイルをとっています。授業が塾講師からの一方通行のみだと、眠くなったり集中力を失くしたりする生徒も多いものです。日能研では生徒が授業中に主体的に発言していくため、双方向のコミュニケーションをとることができ、授業内容が記憶にも残りやすいです。
全国の大きな駅の近くにあるから通いやすい
中には、中学受験塾を探すだけでひと苦労という地域もあるでしょう。首都圏で名の知れた大手中学受験塾に通いたくても、自分が住む地方には全く展開していない場合もあります。その点、日能研はアクセスのよい立地で全国的に展開しているため、比較的通いやすい塾であるといえるでしょう。
出願校選びに定評がある
日能研は多くの生徒を抱えているだけあり、出願校選びには確かなノウハウを持っています。各学校の事情をよく知っているため、全落ちしない併願校の選定で評価が高いのです。
全落ちは、受験にあたって絶対に避けたいもの。全部の学校に落ちてしまったら、進学先は基本的には地元の学校です。もちろん、出願校の最終的な決定権は家庭にありますが、日能研は親身になって相談に乗ってくれます。
- フォローが手厚く出願校選びのノウハウを豊富に持っている
- 大手中学受験塾の中では費用が安く特待生制度がある
- テスト結果がデータ可されている
日能研のデメリットってなに?
日能研のデメリットはどういったところでしょうか。
大手中学受験塾の中で、最難関校レベルの実績は高くない
近年、最難関校レベルの実績はサピックスが圧倒的で、日能研の実績はけっして高くありません。ただ、これは塾としてのレベルが低いというより、中堅校の受験に高いノウハウを持つと見るべきでしょう。
塾選びにおいては、自身の志望校に強い塾に通うのが一番です。サピックスは優秀な塾ですが、相応の経済力と学力と家庭のサポートが求められます。最難関校レベルを目指すのであれば、日能研以外で条件の合う塾を選ぶのがよいかもしれません。
日能研は受験範囲の内容を終えるのが遅め
塾の説明でも触れたとおり、日能研は他の塾に比べて中学受験に必要な内容を一周するのが遅めです。たとえば、四谷大塚は四、五年生のうちに中学受験に必要な内容を全て終えています。六年生の前半で総復習し、後半は学校別対策です。
比べると、日能研は六年生の七月にまでかけて一周目を終えますから、最後のやり込みにかける時間があまりありません。最難関校や上位校を目指している子供で、ハイスピードな授業でもついていけるタイプなら、他の塾のほうが志望校対策に時間を割けるでしょう。
予習が禁止されている
理解度の高い子供だと、自分のペースでどんどん勉強を進めていきたいというケースも多いことでしょう。しかし、日能研では基本的に予習が禁止されています。まっさらな状態で吸収させていくスタイルなのです。
それだけ、わかりやすい授業を提供しているという自負があるのは頼もしい限りですが、合わない子供も出てくるでしょう。
テキストは大手中学受験塾の中で使いづらい
日能研のテキストは「もう少し工夫がほしい」という声もよく聞きます。以下紹介します。
テキストの仕様に批判的な意見も
中学受験塾のテキストには各塾の特徴が出るものです。サピックスのテキストは毎年の試験内容を反映した、即時性ある内容が評価されています。四谷大塚のテキスト「予習シリーズ」も、中学受験対策に優れたテキストとしてよく知られています。四谷大塚だけではなく、早稲田アカデミーでも「予習シリーズ」を採用していることは有名です。
しかし、日能研のテキストに関しては「分厚い」「重い」「カラーじゃない」などといった批判的な意見も聞こえてきます。
改訂の頻度が高くない
日能研のテキストは長い間本格改訂されていなかったため、昨今の問題の傾向を汲んでいないのではないかなどと懸念の声があがっていました。しかし、2020年についに改訂されて大きく内容を見直されています。
改訂後のテキストには、よい点がたくさんあります。子供の関心を引くことを意識したトピックスを、導入部で展開し、比較的入りやすい内容になっているのです。次の改訂がいつになるかはわかりませんが、こまめに見直してもらえたほうが家庭としては安心でしょう。
単色のテキストでキャッチーさに欠ける
日能研のテキストにはさまざまな工夫がありますが、予習シリーズと比べると全体的にキャッチーさに欠け、印象に残りにくいのは否めません。
一番の理由として表紙以外が白黒印刷であることが挙げられるでしょう。日能研のテキストはカラーではありません。そのため、ぱっと見の印象がどうしても地味に感じられます。
加えて、理科のテキストの写真も白黒なので、情報の全体像がつかみにくいという難点があります。比べると、四谷大塚の予習シリーズはカラーでレイアウトもすっきりとわかりやすく、よくまとまっています。
さらに、日能研のテキストは表紙が全てピンクなので見分けがつきにくいです。小学生はただでさえ忘れ物をしがちですし、発達特性上でも色分けが役立つ子供はたくさんいることでしょう。中学受験塾として最も多くの生徒を抱えている日能研ですから、さらなる改善を期待したいところです。
テストの頻度が高くついていけない子供も
日能研はテストの頻度が高いです。つまり、塾側から復習のタイミングを適切に与えられているともいえますが、このペースになじめない子供からは不満の声があがります。テストに振り回され、自分の苦手単元を克服する時間をとれない子供もいるようです。
日能研のケアやフォローを不十分だと感じる場合も
塾の規模が大きいため、面談の回数が多いといっても、子供にぴったりなフィードバックがあるとは限りません。教室やスタッフによっても違いが出てくる部分なので一概には言えませんが、生徒数の多さから個人塾のような距離感でのケアやフォローは難しい部分もあります。
塾の仕組み自体にケアやフォローが組み込まれている安心感はありますが、中には不十分と感じる家庭もあるようです。
- 最難関校レベルの実績は大手中学受験塾の中では少ない
- 受験範囲の内容を終えるのが遅くテスト頻度が高いことで苦手単元の克服に時間を割くのが難しい
- テキストの改定頻度が低いためタイミングによって使いづらさを感じる
転塾先としてもおすすめできる面倒見のよい日能研
もし、大手中学受験塾の授業速度についていけないと感じているようであれば、転塾先として日能研はおすすめできます。大手中学受験塾の中では一番進みがゆっくりで、宿題量も多くありません。中堅校を中心に上位校から下位校まで合格者を出していますし、最難関校を目指すのでなければ、ノウハウはたしかです。経済的に厳しい家庭も、特待生制度を活用できるため、検討してみるとよいでしょう。
面倒見のよい塾ですが、テストの頻度が高いため、中には目先の勉強だけで手いっぱいになってしまい「ついていけない」と感じる家庭もあるかもしれません。その場合は、家庭教師を活用するのをおすすめします。
中学受験においては、塾のサポート的な位置づけで、他の教育サービスを利用している家庭も多いです。大切なのは子供が塾のペースについていけるよう、学習習慣を軌道に乗せること。ぜひ、子供が実力を発揮できるよう環境を整えた上で、日能研のノウハウを最大限に活用してあげてください。