新学期が始まる前に塾を探す家庭は多いです。ところが、せっかく比較検討の末、入る塾を決めたのにいざ入塾してみたら、塾講師や塾が合わないと感じるケースは少なくありません。塾選びに失敗したらどう対応すればよいのでしょうか。
合う塾と合わない塾ってどうやって見極めるの?
合う塾と合わない塾の基準はどこで判断すればよいのでしょうか。
まずは親のニーズと子供のニーズを切り分けよう
「私、この塾合ってないかも……」と子供に相談されても、実際に授業を受けているわけではない親の立場では、子供の言い分が妥当かどうかの判断は難しいでしょう。子供の気持ちを丸ごと受け止めてあげたい反面で、「もしかして、この子の言っていることは、ただの甘えなんじゃないだろうか?」と疑いの念を抱いてしまうこともあるのではないでしょうか。
「子供に合う塾」とは、どんな塾でしょう。もちろん、塾に求める要素は家庭によって違います。短期的に成績を上げてくれる塾。学校でわからない部分を解決してくれる塾。志望校に合格するレベルまで偏差値を引き上げてくれる塾。目標に合わせてさまざまなニーズがあるはずです。
親にも子供にも「こんな塾がよい」という理想像があります。親子ともに「ここはいやだ」と意見が一致したのなら、やめる決断もスムーズでしょう。
困るのは親にとってのニーズを満たしているのに、子供は不満を抱いているというケースです。つい子供の訴えに対して「でも、塾に通ってから、成績も上がったしいいじゃない」と親の意見に基づいた物言いをしてしまいます。子供がなぜ不満を抱いたのかを聞くところから始めるようにしましょう。
子供の塾への不満で多い事例はどんなもの?
子供の塾に対する不満としてよくある事例はどんなものなのでしょうか。
塾講師との相性が悪い
子供が「塾講師とウマが合わない」と訴えるケースは珍しくありません。個別指導塾であれば交代を申し出れば済みますが、集団授業の塾ではそう簡単に先生の交代は望めません。交代させようと思ったら、塾講師の具体的な問題行動を指摘するか、クラスの多数の保護者から一斉に声があがらないと難しいです。
塾講師とひと口に言ってもさまざまな人がいます。指導力にも差がありますし、残念ながらよい先生ばかりではありません。子供が声をあげたら聞き流さないで、子供が何を不満に思っているのかヒアリングしましょう。親の目を通しても問題だと感じるようであれば、塾長を通して改善を求めてください。
塾内での人間関係の悩み
塾内で人間関係トラブルが起きるケースもあります。塾の方針にもよりますが、成績向上のために生徒同士で激しい競争をさせる塾も少なくありません。生徒に大きなストレスがかかると、それが原因で人間関係トラブルに発展しがちです。塾側から状況説明をしてもらい、必要であれば介入してもらいましょう。
塾の学習ペースについていけない
集団授業はさまざまな成績の子供が参加するため、どうしても勉強についていけない子供が出てきます。理解が追いつかないまま、授業を受けるのは苦痛です。クラスがレベル別に分かれている塾であれば、下位のクラスに移籍させてもらう選択肢も検討したほうがよいでしょう。ワンランク下げるとなると、「せっかく上位クラスにいるのに、気が緩んでしまわないか」と懸念する家庭もあるかもしれません。しかし、学習ペースを落としたほうが子供の理解は進みます。
塾でスケジュールが埋まるため遊べない
塾によっては予習復習に追われたり、大量の宿題が課されたりして、友達と遊ぶ時間が全く持てなくなるケースもあります。その状態がずっと続くと、子供の学校での人間関係がこじれてしまい大変です。加えて自分の時間が全く持てないのもストレスにつながります。
塾に相談して、宿題量の調整を個別対応でお願いしてみるとよいでしょう。ずっとは無理でも、期間を区切って経過観察としての対応なら意外と応じてくれるものです。
思ったように成績が上がらない
思ったように成績が上がらず、勉強にやりがいを感じられなくなるケースもあります。その場合は塾への面談を申し入れて、どうしたら成績が上がるのかについて一度話し合ったほうがよいでしょう。学習計画を根本から見直して最適化する必要性があります。
塾と話し合っても上手くいかなかった場合
塾と話し合って対策を考えても、上手くいかないケースもあります。その場合はどのようにすればよいのでしょうか。
塾と更なる話し合いをする
塾を信頼しているのであれば、再度面談の場を設け、「現状のままではよくないと考えていること」を伝えてみてください。その際、意図の食い違いがないよう、対策を紙面に箇条書きにして共有しておくとよいでしょう。基本的に要望は塾長に伝えるものですが、塾長だけで抱えて塾内で共有されていないケースも多いです。もし、前回塾長と話し合いをしていて成果があがっていないのであれば、担当講師も同席させるよう事前に申し入れておきましょう。
子供と更なる話し合いをする
塾の提供するサービス自体には問題がない場合、わが子の勉強へのアプローチを見直す必要性があります。まず、子供と話し合う前に、親は現状子供の取り組みの、どういう点がよくてどういう点が悪いのかを書き出してみましょう。悪い点だけではなくよい点も書き出すのは、子供のやる気をそがないためです。
親はどうしても子供の抱える問題ばかりに目を向けてしまいます。しかし、問題ない部分、つまり当たり前の部分を逐一承認してあげなければ、子供は「認められていない」という不満を溜め込んでしまうものです。できて当たり前だと決めつけず「今日もちゃんとできているね」と日々声かけを忘れないようにしましょう。
もし日々の声かけが疎かになっているのであれば、なおのことこの機会に書き出して「あなたの取り組みをしっかり認めている」と伝えるとよいです。子供の自尊心を育てていけば、ある程度は耳が痛い指摘も聞く姿勢を見せてくれます。
たとえば、家庭学習のやり方が甘いのであれば、頭ごなしに「勉強量が足りてないよ!」と叱るのではなく、「今はこれだけできていて、こういう風に取り組めているね」と現状の確認から入ります。「取り組んでいるね」ではなく「取り組めているね」というようなポジティブな言葉選びを意識しましょう。
その上で、「今の目標はどのあたりかな」「なるほど。そこに到達するためにはなにをしたらいいんだろう?」となるべく子供自身に考えさせる方向で会話を展開してみてください。
会話の具体例としては以下のとおりです。
「プラスアルファの勉強が必要である」事実は、子供に現状を認識させてから提示するとよいです。先に「勉強しないと!」と言われると、多くの子供がうんざりします。
次に、具体的な勉強のやり方を決めていきましょう。
塾の予定や宿題の予定、勉強の予定などを紙に書き出して、子供に何曜日ならできるか尋ねてみてください。親はあくまでフォローする立場であって、リードする立場にならないことが大切です。押し付けがましくしてしまうと、「私が決めたんじゃないもん。やっぱりやりたくない」と子供が言い出す危険性があります。
転塾を検討する
塾に改善を望むのが難しいと判断したのであれば、転塾を検討する手もあります。ただし、転塾はイチから他塾のやり方に合わせなければなりません。子供も新たな環境に慣れるまでに相応の時間を要するでしょう。だからこそ、転塾するなら早めに動き始めることをおすすめします。
塾を探す際には、今の塾の問題点を正確に把握していないと同じことの繰り返しになりかねません。たとえば、勉強についていけていないのであれば、じっくり時間をかけて教えてくれる塾を探しましょう。先生と相性が悪いのであれば、いざというとき別の先生のクラスに移動できる塾や、担当講師の体験授業が受けられる塾などを選ぶとよいかもしれません。
子供が転塾するかどうか決断しかねているときは、本人に今の塾のメリット・デメリットを書き出してもらって話し合いましょう。
塾以外のサービスを検討する
勉強のやり方ひとつとっても、子供にはそれぞれ向き不向きがあります。わが子に塾という形態が向いていない可能性を検討してみましょう。
実際、集団で授業を受けるのがプレッシャーな子供、自分から質問に行くのが苦手な子供、耳からの情報を処理するのが苦手で先生の話を聞き流してしまう子供、友達との競い合いを避けたい子供などさまざまなタイプがいます。
子供の問題点がわかれば、相性のよいサービスを探す手がかりになるはずです。塾以外の教育サービスの中から、どれがわが子に向いているかを考えてみてください。以下のようなさまざまなサービスが展開しています。
家庭教師
家庭教師の場合は、通塾時間が不要、一対一での指導、オーダーメイドカリキュラム、臨機応変な対応が可能などのメリットがあります。競い合うよりもじっくりフォローしてほしいタイプの子供には最適なサービスでしょう。先生の質によってサービスの質が大きく変わるところはありますが、先生に不満があればだいたいどこも無料交代で対応してくれます。
集団授業よりもコスト面が高くつきやすい点はデメリットですが、その分わが子に割いてもらえる時間は確実に長いです。また、「家庭に来てもらうとなると、掃除やら片付けやらお茶出しやらがわずらわしい」と考える家庭もあるでしょうが、最近ではオンラインサービスを提供しているセンターもたくさんあります。各社のサービスを比較した上で検討してみることをおすすめします。
通信教育
通信教育は子供の性格によっては、その子供の理解のペースに合わせて進められるのがメリットです。「決められた曜日の決められた時間にやらなければならない」という縛りがなく、趣味や習い事で多忙な子供にはぴったりのサービスだといえます。教育のレベルも学校に合わせたものから難関校進学を前提とするものまで、選択肢の幅は広いです。ただ、塾や家庭教師に比べると、やる気がないとサボりがちになってしまう点がデメリットといえるでしょう。オンラインや電話、郵送などさまざまなサポート体制が用意されているサービスを選び、上手く活用していくことをおすすめします。
市販の教材
市販の教材の場合も通信教育と同様、油断するとサボりがちになってしまいかねない点はリスクだといえます。解説が丁寧な教材を選んでも、どうしてもわからない問題にぶつかることはあるでしょう。そうしたときに、家庭や学校の先生にサポートを求められる環境かどうかなどで活用できるかどうかが変わってきます。
塾講師や塾が合わないと感じたら早めに次の対応を
「この塾合わないかも」「この先生はちょっと信頼できないかも」。そう思っても入塾したてだと遠慮が勝ってしまい、なかなか行動を起こせないものです。
しかし、躊躇う必要はありません。実際、塾は家庭からの問い合わせに慣れていて、なにかしらの電話は毎日かかってきています。遠慮せず一度問い合わせてみましょう。保護者からの問い合わせに誠実な塾であるかどうかを確認するためのよい機会にもなります。
塾との間のやりとりで事態がスムーズに解決すれば問題ないですが、なかなかそう上手くはいきません。その場合は、塾やわが子と再度話し合って解決策を模索するか、もしくは転塾や他の教育サービスの活用を検討しましょう。わが子にどんな学習法が向いているのか、現状抱えている問題点はなにか、一緒に考えてあげることをおすすめします。