地域によって認知度は違いますが、少なくとも首都圏で中学受験を目指す家庭なら、サピックスの名前は知っていることでしょう。サピックスは、最難関校レベルの学校で合格者を多数出していることで有名な中学受験塾です。この記事ではサピックスで行われているテストを中心に、サピックスのことを紹介していきます。
サピックスってどんな塾?
まずはサピックスがどんな塾なのかを紹介します。
サピックスは最難関校受験で実績を残す塾
サピックスは難関校の合格実績が抜きんでて優れた塾です。男女御三家のような最難関校を目指すのならサピックスは第一候補に挙がる塾といえるでしょう。たとえば、2021年度の開成の合格者の六割程度がサピックス出身ですし、男女御三家の計六校でもサピックス出身者は五割以上を占めています。
実力ある講師たちが毎年テキストを見直しているため、常にアップデートされたカリキュラムが提供されます。ハイレベルな授業をハイペースに行い、宿題も膨大です。サピックスは中学受験におけるエリート塾ともいわれます。逆にいえば、中位校以下の学校を目指す家庭にはおすすめしません。サピックス以外の塾で十分対応可能だからです。
費用が高いと言われているけれどどう?
大手中学受験塾の中では費用は高いです。代表的な中学受験塾であるサピックス・四谷大塚・日能研・早稲田アカデミーの四年生から六年生の費用を比較すると、六年生九月以降の月謝は四谷大塚が一番高いですが、それ以外の時期はサピックスが高いです。
授業料以外では、春期講習や夏期講習といった特別講習の費用、地図帳や問題集などの書籍代、公開模試の費用がかかります。なお、サピックスの費用はわかりやすいと評判です。後出しでいろいろと追加請求されない点は高く評価されています。ちなみに、成績上位者への授業料免除制度はありません。
サピックスには自習室がない
塾選びにおいて、自習室の有無を重視している家庭は多いでしょう。実際、ほとんどの塾には自習室があります。
しかし、サピックスには自習室がありません。つまり、他の多くの塾のように自習室で居残りながら、先生に宿題や授業内容について質問するのは無理です。すべて持ち帰り、家庭で取り組みます。学習習慣がついていない子供には向いていません。
「自習室で勉強ができないのは、効率的ではないのになぜ」と感じる家庭も多いでしょう。しかし、塾によっては自習室での私語が目立ち、学習するための環境として機能していないケースもあります。また、本人にやる気がなくダラダラと自習室に居残っているケースもあります。サピックスは集中して授業を受けたら、あとは家庭のサポート下で徹底的に勉強するというスタイルの塾なのです。
サピックスは配布物も宿題も多い
授業ごとに配布されるテキストやプリントはかなりの量で、その都度整理していかなければなりません。サピックスの教材専用の整理棚を設けている家庭の話もよく聞きます。量が量だけに、ひと目見てなにがどこにあるかわかるように整理するのは子供にはまず無理です。
サピックスの宿題量は膨大ですし、子供が授業についていくためには親がスケジュール管理をしながら、家庭学習のサポートをする必要があります。なお、生徒が自力で考える姿勢を重視した教育をしているため、テキストの解答解説はそこまで詳しくありません。
サピックスでは塾と家庭の連携が欠かせない
スケジューリング管理に学習サポート、配布物の整理に追われるため、サピックスは家庭のフォローが万全でないと難しい塾です。その覚悟は入塾時に持っておく必要があります。
サピックスが支持されるのは授業の質が高く、優れた合格実績を出せるだけのノウハウがあるからにほかなりません。難関校に受かるため、家庭と塾で連携して子供を合格へと導きます。
サピックスで実施されるテストって?
塾で大切なのは授業だけではありません。モチベーションを上げるためにはテストもまた重要です。サピックスにはいろんな種類のテストがあります。以下紹介します。
サピックスの入室テスト。誰もが入れるわけではない
サピックスに入ろうと思ったら、最初に入室テストを受ける必要があります。範囲指定のないテストなので、これまでの学習の積み重ねが大切です。サピックスに入塾して無理なく授業についていけるレベルかが問われます。入室基準点に達していれば必ず入塾は可能で、「合格者が多いから少し減らそう」といった対応はしていません。
通常の授業だけではなく、各種特訓や講座を受講する際にも入室テストを受ける必要があります。入室テストの答案は回収後、スキャナーで読み取ります。字が薄いと読み取れないため、はっきりと書くようにしましょう。
漢字のトメ・ハネ・ハライについてはかなり厳密に採点しているそうです。テストを受けさせる前に、改めてわが子の字の書き方が正確であるかをチェックしたほうがよいでしょう。
コースにも直接的に影響。サピックスのマンスリー確認テスト
コースの昇降がかかっているマンスリー確認テスト。具体的にどのような問題が出て、どう対策すればよいのでしょうか。
サピックスのマンスリー確認テストってなに?
サピックスのマンスリー確認テストは、塾生のコースの昇降にかかわるテストのうちのひとつです。一~三年生は確認テスト、四~六年生はマンスリー確認テストが実施されます。
サピックスでは生徒の成績によって細かくコースが分かれています。上位コースほど成績優秀な子供が切磋琢磨していますし、子供のモチベーションも高くなります。なお、1コースあたりの人数は少人数制をとっていて、15~20人です。
なぜマンスリー確認テストが必要なの?
基礎レベルの定着化が怪しいままどんどん先に進んでしまっては、受験で合格を勝ち取ることはできません。マンスリー確認テストはその名のとおり、月一回、あるいは二カ月に一回のペースで学んだ内容を振り返り、復習の機会を作ります。勉強は、同じ内容を繰り返さなければ、短期間で記憶が抜けていってしまうものです。振り返りこそが大切です。
マンスリー確認テストって難しいの?
マンスリー確認テストで「なかなか点数がとれない」と嘆く家庭は多いです。しかし、実はマンスリー確認テスト自体のレベルが日頃の授業内容と比べて高いわけではありません。サピックスではデイリーチェックと呼ばれる小テストが行われます。デイリーチェックと基礎力定着テストの内容をしっかりと理解できていれば、まず間違いなく高偏差値がとれるのです。日々基礎レベルの学力の定着化を図るだけで偏差値60以上も十分可能だといえます。マンスリー確認テストでは、これまで解いてきた問題の数値を入れ替えただけの問題も多いので、復習さえできていればぐんと点数が伸びるはずです。
マンスリー確認テストで点数がとれない!どうすればよい?
「デイリーチェックや基礎力定着テストが理解できていれば高偏差値がとれる」ということは、逆に言えばそれができている人はとても少ないということです。「受験エリート」ともいわれるサピックス生なのに、と意外に思う人もいるかもしれません。
サピックスはハイレベル・ハイペースな塾です。膨大な宿題や目先の勉強にばかり気をとられていると、小さなテストの復習にまでは手が回らなくなる傾向にあります。「だって、時間がないんだもん」と多くの子供は嘆くことでしょう。しかし、そのままのやり方を続けていると、かえってタイムロスになります。
よほど抜きんでた記憶力の持ち主ならば別ですが、多くの子供は復習を繰り返すことでなんとか記憶を定着させます。デイリーチェックや基礎力定着テストをやりっぱなしにしない姿勢が大切です。その日のうちに復習し、一週間以内に間違えたところを再度復習しないと、あっという間に抜けていってしまいます。
全て抜けたあとに最初から覚え直すのはとても効率が悪く、時間を無駄にするばかりです。隙間時間で見直せるはずですから、見直しをルーティンとして確立することをおすすめします。なお、問題を丸暗記して解ける気になってしまうとやっかいなので、復習する際には引っかかった問題の類題まで解くようにしましょう。
コースの昇降には影響しない復習テスト
復習テストは組み分けテストと同月に実施されます。コースの昇降には影響しませんが、だからといって復習テストを軽視するのは危険でしょう。なぜなら、復習テストは範囲が指定されたテストであり、マンスリー確認テストと同様、日々の学習が定着しているかをチェックする目的で行われるからです。復習テストでよい点数がとれないということは、日々の学習が軌道に乗っていないことを意味します。その場合は、早急に学習法を見直す必要があります。
範囲がない?サピックスの組分けテストを勝ち抜くには
年に三回行われる、範囲指定のない実力テストが組分けテストです。以下詳しく紹介します。
サピックスの組分けテストってなに?
サピックスで行われる実力テストが組分けテストで、その名のとおりコースの昇降に影響します。各季節講習前に行われるため、三月、七月、一月の順番に受けていく流れです。ちなみに、六年生は一月の組分けテストはありません。組分けテストは日曜日や祝日に行われます。
なぜ組分けテストが必要なの?
実力テストは範囲指定のテストとは別の難しさがあります。現時点での実力を知ることは受験において大切です。今後注力しなければならない単元がどこなのか、これまでの学習法が通用するのかどうかを知り、自身の改善点を分析する貴重なチャンスといえます。
組分けテストって難しいの?
理解しておかなければならないのは「組分けテストの問題もまた難易度は決して高くない」ということです。だいたい五~六割が基礎力トレーニングレベルであることを認識しておきましょう。実際、平均点も基礎力トレーニングレベルの配点と同じぐらいになります。
では、残りの応用レベルにはどう立ち向かえばよいのでしょう。実は、応用といっても本当に難しいのは一割を超える程度です。あとの問題はデイリーサピックスで出る、やや難しめの問題が解けていれば攻略可能といえます。
組分けテストで点数がとれない!どうすればよい?
基礎力トレーニングレベルが半分以上を占めることが多いため、デイリーサピックスの基本レベルのやり込みが重要です。デイリーサピックスを復習する習慣をつけておくようにしましょう。
ただし、気をつけなければならないのは、デイリーサピックスと全く同じ問題が出るわけではないということ。「なにを当たり前のことを」と思うかもしれませんが、ここはマンスリー確認テストと大きく違うところです。マンスリー確認テストでは、数値だけを入れ替えたような出題のされ方が目立ちます。つまり、解き方を丸暗記していても攻略可能なのです。
しかし、組分けテストではそうはいきません。問題を本当に理解できているかが問われます。デイリーサピックスの復習をする際に類題まで解いていたような子供は、組分けテストでも力を発揮できるでしょう。
サピックスのテストは志望校合格のためにある
サピックスのテストはコースの昇降に影響するものとしないものに分かれます。たしかに、どのコースに入るかは大切です。本人のモチベーションや、出会うライバルも大きく変わってきます。しかし、コースはあくまで志望校合格のための手段でしかありません。よいコースに入ることが目的化してしまっては本末転倒です。コース昇降に影響しないテストも含めて、今の勉強の仕方でよいのか、どこを復習するべきなのかを問う機会にすることをおすすめします。
サピックスはハイレベルな塾ですが、テスト自体が無駄に難しいわけではありません。日常的な勉強がちゃんとできているのかをきっちりと問うように作られています。
もし、日常的な勉強ができていないのであれば、それは家庭だけでのサポートに限界があるのかもしれません。一般的に、中学受験における家庭のストレスは大きいものです。やらなければならないタスクが多いサピックス生の家庭ともなれば、なおのことでしょう。
上手くいかなかったり辛かったりしたら、家庭学習の部分をまるっとアウトソーシングするのも手です。ぜひ一度、家庭教師をはじめ他の教育サービスの活用を検討することをおすすめします。